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【東電 財物賠償手続き開始】 全体件数把握できず 所有者確認6割弱 未登記物件 取り扱い課題

 東京電力福島第一原発事故に伴う財物賠償で、東京電力は29日、宅地・建物と家財の賠償手続きを開始した。避難区域を抱える双葉郡など11市町村の被災者が対象で、請求手続きがスムーズに進めば、4月末にも支払いが始まる見通しだ。県内外に避難した被災者の生活再建の動きに弾みがつくとみられる。
 本来なら、昨年秋に始まる予定だった財物賠償は、年をまたぎ年度末ぎりぎりのタイミングで始まった。しかし、不動産の所有者確認など課題が全て解決したわけではない。賠償の正確な対象件数も把握できておらず「見切り発車」のスタート。早くも社内から「この調子で、本当に支払いを開始できるのか」との声も漏れる。

■不一致
 東電は29日、避難区域の11市町村の住民を対象に請求書類の発送を開始した。
 賠償額の算定に必要な固定資産税の課税明細書を入手した2万世帯に早急に送る方針だが、初日の送付件数は1万1000件にとどまった。課税明細書と不動産登記の情報が合致し、所有者を完全に確認できた件数が6割弱だったためだ。
 残りの9000件は「課税明細書と登記に、それぞれ記されている土地や建物の面積がわずかに異なり、所有者と断定できない」として見送られた。東電は対象者に直接問い合わせるなどし、4月中旬までに発送を終える方針だが、「遅れる可能性も否定できない」(福島復興本社)としている。

■限界
 そもそも東電は、賠償の対象件数を完全には把握できていない。
 課税明細書で2万件分は確認できたが、過去の精神的損害賠償などの支払い実績から対象件数は約5万件に上るという見方もある。若い世代などで不動産を所有していない世帯も少なくないとみられ、不動産登記情報に頼るには限界がある。
 最大で約3万件分に上る対象の確認作業をうまく進める妙案は浮かんでいない。東電関係者は「最悪の場合、精神的損害賠償を請求した一人一人に確認する膨大な仕事が待っている」とため息をつく。

■救済策は
 請求開始が遅れる原因となった未登記物件の取り扱いにも課題が残る。東電は家屋が未登記であった場合、宅地の登記情報に記された所有者と、固定資産税の納税義務者を突き合わせて確認するなどの要件緩和策を今回、打ち出した。しかし、宅地、家屋の両方が未登記であるケースの"救済策"は決まっていない。
 経済産業省資源エネルギー庁は「そうしたケースは少ないと聞いているが、案件があれば個別に対応するしかない」としている。

【背景】
 東京電力は昨年7月、財物賠償の基準を発表し、秋ごろの請求受け付け開始を目指していた。しかし、賠償額の算定に必要な固定資産税データは納税者本人しか閲覧できず、入手方法をめぐり東電と市町村の協議が難航した。さらに、賠償金支払いの条件となっていた不動産登記をしていない物件が多いことが判明。避難区域内で津波を受けた不動産の取り扱いも課題となり、調整が大幅に遅れていた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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