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漁師の夫支える

■浪江町請戸 叶谷緋佐子さん(71)

 緋佐子(ひさこ)さんは、相馬双葉漁協副組合長兼請戸支所長などを務めていた夫の守久さん(73)を支え、家庭を守った。
 南相馬市小高区で製材業を営んでいた実家の長女として生まれた。昭和30年代には地元の製糸工場に勤務。明るく、真面目な仕事ぶりで、周囲から評価が高かった。
 緋佐子さんと守久さんは同い年で、22歳の時に知人の紹介で見合いをし、結婚した。子ども3人に恵まれた。緋佐子さんは守久さんが漁に出ている間、子どもを育て、家計をやり繰りした。
 シラウオやカレイなどが豊漁の時は、守久さんの漁師仲間を自宅に招き、祝いの夕食会を開いた。緋佐子さんは手料理でもてなした。
 金婚式まであと1年となった春に震災は起きた。緋佐子さんは自宅で強い揺れを感じた。倒れた家財道具の後片付けをしていた時、守久さんが漁協事務所から戻った。2人は車で高台へ逃げた。車を降りて海の方角を見ると、黒い壁のような波が迫ってきた。緋佐子さんと守久さんは斜面を登ったが、背後から波をかぶった。つないでいた手が離れた。守久さんは立木の根に足が挟まれたが、何とか抜け出し夢中で斜面を駆け上がった。「生きていてくれ」。願いはかなわなかった。緋佐子さんは4月17日に高台の近くで見つかった。
 守久さんは、豊漁の時に港で待っていた緋佐子さんの笑顔が今も忘れられない。

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