東日本大震災アーカイブ

識者の目 県避難地域復興局次長 安斎睦男さん 社会基盤の整備欠かせず 避難区域再編

 原発事故から2年が経過し、警戒、計画的避難両区域の区域再編が進んできた。両区域が設定された11市町村のうち、双葉町と川俣町山木屋地区を除く9市町村は避難指示解除準備、居住制限、帰還困難のいずれかの区域に見直された。除染や社会基盤整備など解除に向けた課題と解決策を聞いた。

 −国は当初、区域再編を平成24年3月末をめどに完了させる想定だったが、大幅に遅れた。再編に時間がかかった原因は。

 「原発事故に伴う損害賠償の問題が背景にある。避難者にとって賠償は生活再建の根幹に関わるが、宅地・建物などの財物、精神的損害の賠償は再編される区域によって異なる。つまり、自分の居住地がどの区域に再編されるかで賠償額が左右されることになる。自治体から一律賠償などの要望もあり、国が自治体との話し合いを繰り返し、理解を求めてきた。県も双方の間に立ち、調整に努めてきた経緯がある。賠償の道筋が一定程度立ったことで、区域再編も進めることができた」

 −避難指示解除準備区域は設定から2年程度での区域解除を目指しているが、住民が帰還するためには安定した生活環境の確保が課題だ。

 「住民の帰還には、上下水道や道路など社会基盤の整備が欠かせない。解除準備区域が最初に設定された南相馬、田村、楢葉、川内の4市町村の上水道や地下水はおおむね給水が再開できているが、下水道や下水処理施設はまだ完全には復旧していない部分がある。また、介護施設や病院、学校、商店街など日常生活に関わる部分の再開も同時進行で進めなくてはならない。国からの交付金を活用しながら、どう優先的に整備していけば良いかを国と県、市町村とで協議を進めていく」

 −避難区域の国直轄による除染、沿岸部の震災がれき処理も進んでいない。

 「直轄除染の作業が始まった田村、楢葉、川内、飯舘の4市町村のうち、(2月末時点で)飯舘村の農地が0%、田村市の森林は当初予定の24年度完了を達成できないなど全体的に作業が遅れ気味だ。国が直轄で進める11市町村のうち、残り7市町村は本格除染が始まっていない。背景には仮置き場確保の難航などがある。震災がれき処理も一部で仮置き場への搬入が始まったにすぎず、ほとんどが手付かずだ」

 −帰還困難区域は長期間の避難を強いられることが想定される。

 「避難先で安定した生活を送れるよう、災害公営住宅の整備、コミュニティーの形成、心のケアなどを進める。特に災害公営住宅の整備を急ぐ必要がある。県は会津若松、郡山、いわきの3市に県営災害公営住宅500戸を先行整備し、26年度の入居開始を目指している。居住空間の安定を目に見える形で提供することで、安心感を持ってもらうことができると考えている」

 あんざい・むつお 福島市出身。福島高、東北大法学部卒。昭和57年に県職員となり、本宮町助役、入札管理課長などを歴任。平成24年4月から、新設された避難地域復興局の次長を務める。53歳。

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