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【浪江再編あす1カ月】帰還へ希望の一歩 給油所6月にも再開 バリケード多く町民困惑

避難区域が再編された浪江町内のバリケード。109カ所に設けられている

 東京電力福島第一原発事故に伴う浪江町の避難区域再編から1日で1カ月がたつ。避難指示解除準備区域になった町の中心部では、ガソリンスタンドの再開に向けた準備が進む。町は2年ぶりに町役場で業務を開始したが、町内で負傷した住民の処置や町内109カ所に設けられたバリケードに関する問い合わせなど想定外の対応に追われている。今夏からの本格除染に向け、除染で出た土壌などの仮置き場の確保が課題だ。

■町民を待つ
 「すべき仕事がはっきりした。希望が見えてきた」
 町内でガソリンスタンドなどを経営する叶屋社長の叶経道さん(53)は、町内新町通り沿いにある店舗の復旧工事の様子を見詰めながら笑顔を見せた。
 叶さんは6月上旬にもガソリンスタンドを再開させる考えだ。避難区域再編後、必ず事業を再開しようと昨年3月ごろから準備を進めてきた。再編された1日には早速、店舗内に入り、震災後残されたままになっていたガソリンや軽油、灯油などの品質検査を業者に手配した。検査の結果、品質は低下していないことが分かった。
 事業再開に不安もある。インフラの復旧や除染が進まない中、どの程度の顧客が見込めるか想像がつかない。「採算が取れるかどうか分からない」。ただ、倒壊した家屋や地割れを起こしている道路などを見るにつけ、「古里の復興のために何か力にならなければならない」との思いを強くする。
 現在、震災で崩れた店舗敷地の壁の補修工事などを行っている。「多くの町民が必ず戻ってくる。それまでこの場所で待つ」と店舗を見上げた。
 町によると、町内で事業を再開させたケースはない。「まだ町への帰還の第一歩を踏み出したばかり」。担当者は自分に言い聞かせるように話した。

■想定外
 東日本大震災と原発事故から約2年間、無人だった浪江町役場。今月1日から職員が常駐し、町内に立ち入る住民の支援に当たっている。1日当たり、10人前後の町民が町役場を訪れているという。
 「割れたガラスでけがをした」。22日午後4時ごろ、後頭部から血を流した男性が町役場に駆け込んできた。職員の1人がすぐに「救急車を呼んで」と他の職員に指示し、自らは救急箱を取り出して応急処置に当たった。
 しかし、町役場の救急車は防犯、防火パトロールのために町内に外出中だった。住民は血を止めようとティッシュペーパーで頭を抑えながら救急車の到着を待った。「震災前なら救急車が役場近くに待機しており、すぐに搬送できたのに...」。職員の1人はつぶやいた。男性は間もなく到着した救急車で南相馬市の病院に運ばれた。
 町は町内に一時立ち入りする町民の急病やけがに対応するため、5月9日に応急仮設診療所を町役場本庁舎に設置する予定だ。
 町役場には、避難区域再編に関する電話による問い合わせが1日20~30件寄せられている。中でも多いのは、防犯対策のために町内109カ所に設けられたバリケードに関する内容だ。「バリケードで道路が迷路のようになっている。自宅までたどり着くのが大変」などの苦情も目立つ。町の担当者は「住民の財産を守るために必要な対応」とし、「住民に分かりやすく説明し、理解を求めたい」と話した。

■除染間に合うか
 町は、今夏にも国の直轄除染が始まる見通しを示している。環境省福島環境再生事務所は町内の除染で出る土壌などを搬入する仮置き場の面積を東京ドーム30個分に当たる約142ヘクタールと算出した。だが、具体的な設置場所は決まっていないのが現状だ。町民からは「本当に夏にも除染を始められるのか」と疑問視する声が上がっている。
 町は仮置き場を町内全行政区ごとに設置する方針で、各行政区長への説明を始めた。行政区によっては具体的な仮置き場の候補地も上がっている。しかし、候補地の地権者の内諾を得ても、周辺の住民が納得しないケースがあるという。「中間貯蔵施設の建設が不透明である以上、仮置き場の設置期間が長引きかねない」と懸念する住民もいる。
 除染を担当している町職員の1人は「このままでは除染が進まない。国は責任を持って中間貯蔵施設、最終処分場の見通しを示してほしい」と訴えた。


【背景】
 浪江町は1日、帰還困難(年間積算線量50ミリシーベルト超)、居住制限(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)、避難指示解除準備(同20ミリシーベルト以下)の3区域に再編された。日中の出入りが自由となった避難指示解除準備、居住制限の両区域の人口は8割に当たる約1万6500人。立ち入りが制限される帰還困難区域の人口は約3400人。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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