北海道電力など4社が5原発10基の再稼働に向け国への安全審査申請に踏み切った8日、東京電力福島第一原発事故で避難などを強いられている県民からは「まだ原発事故が収束していないのに」「福島の悲惨な状況を忘れ去られているのか」と批判の声が上がった。
「2年4カ月も続けている避難生活の苦しさを分かった上での申請なのか」。浪江町で酪農業を営んでいた今野幸四郎さん(77)は憤る。原発事故後、和歌山県の親戚宅などを転々とし、今は本宮市の仮設住宅に落ち着いた。電気が必要不可欠なことは分かっている。それでも国内の原発が次々に動きだすことへの不安が先に立つ。「故郷を奪われたままだ。再稼働を許すことは到底できない」
原発の新規制基準を設けた原子力規制委員会は「世界最高水準の規制」と自負する。だが、福島第一原発がある双葉町から避難し、埼玉県加須市の旧県立高で暮らす林日出子さん(81)は厳しい口調で思いを吐き出した。「基準を厳しくしても、事故は起こり得る。再稼働のための基準なんてとんでもない」
旧県立高では今も100人余が生活し、教室に敷き詰めた畳の上で寝起きしている。7日の七夕には、色とりどりの短冊に思いが記された。「懐かしい故郷双葉の星空。今は皆様のおかげで加須の星空見上げています」と書いた林さん。「なんで私たちの声は届かないんだろうね」と、ぽつりとこぼした。
富岡町から三春町の仮設住宅に避難し、自治会長を務める松本政喜さん(66)は、基準そのものが十分なのか、疑問が残るという。「原発事故が収束していないのに新基準で進めるというのは、あまりに軽率だ」と訴えた。
一方、楢葉町から会津美里町の仮設住宅に避難する女性会社員(32)は復興が進まない現状にいら立ちを抱えながらも「反対だけしても前には進まない。復興を進めるためにはエネルギー問題をしっかり考えなければならない時期に来ているのかもしれない」と複雑な思いを打ち明けた。
三春町の自営業今泉進一さん(38)は「福島第一原発のような事故を繰り返さないことが重要だ」と話し、「電力会社は利益最優先で再稼働を焦るのではなく、安全対策を説明し、理解を得る努力を続けるべき」と語った。
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