東日本大震災で被災した本県を応援するシンポジウム「明日へ 紡ぎ繋(つな)ぐメッセージ」(徳島新聞社主催、福島民報社共催)が15日、徳島市文化センターで開かれた。徳島市出身の作家瀬戸内寂聴さん、三春町在住の作家玄侑宗久さんらが宗教や哲学、文学など幅広い観点から復興に向けた議論を展開し、約1000人が耳を傾けた。
シンポジウムは2部構成。第1部は三春町の福聚寺住職の玄侑さんと、徳島県阿南市出身の哲学者鎌田東二さんが「こころの復興」をテーマに対談した。進行は、いわき市出身の岡本光雄徳島新聞社経済部長が務めた。
震災から2年4カ月が過ぎた本県の現状について、玄侑さんは心療内科やカウンセラーへの相談が後を絶たないことや放射性物質による汚染を苦に自殺したりする人がいる状況を説明し、心のケアの必要性を強調した。
被災地訪問を続けている鎌田さんは、岩手県釜石市で小中学生が自主判断で津波から逃れた「釜石の奇跡」に触れた。「子どもの命は助かったが、目の前で人が波にのみ込まれる状況を目の当たりにし、心の傷は癒えていない」と指摘した。
次の災害への心構えについて、玄侑さんは「小さなコミュニティーの中で協力し合うことの重要性が分かった。今の日本を覆うグローバリズムと、ローカリズムをいかに両立すべきか、ずっと考えていきたい」。鎌田さんも、お互いの顔が見える「等身大」のつながりの大切さを強調した。
第2部では、瀬戸内さんをはじめ、被災地支援に取り組む経営者組織「盛和塾徳島」代表世話人の石原譲さん、映画「フラガール」でおなじみの、いわき市のスパリゾートハワイアンズを運営する常磐興産会長の斎藤一彦さん、飯泉嘉門徳島県知事が意見を交わした。福島民報社から高橋雅行社長が出席した。
■9月16日福島で鼎談
シンポジウムは昨年、復興に向けて紙面交換をした福島民報社と徳島新聞社の共同企画の一環。9月16日には復興支援事業として福島市で鼎談(ていだん)などを行う。
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