東京地検は9日、東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発された勝俣恒久前東電会長(73)や菅直人元首相(66)ら42人全員を不起訴処分とした。東日本大震災の巨大津波による被害予測は困難で、事故後の対応も過失に問えないと判断した。告訴・告発側は検察審査会に審査を申し立てる方針。
告訴・告発したのは県民らでつくる「福島原発告訴団」などの複数の団体。地震や津波の安全対策を怠った結果、放射性物質を放出させる原発事故に至り、周辺住民の避難を遅らせた他、双葉病院の入院患者らを死亡させたり、多くの住民を被ばくさせたりした−などと訴えていた。
東京地検によると、原発事故は、10メートルを超える大津波による電源喪失が原因と位置付けた。平成20年6月に高さ約16メートルの津波到来も予測されていたが「専門家の統一的見解とはいえない」とした。その上で、東電幹部らが巨大津波到来を予測するのは困難だったと結論付けた。
放射性物質を拡散させた公害犯罪処罰法違反容疑については、同法が事業活動に伴う公害発生を処罰するため、津波被害を起因とする電源喪失が引き起こした放射性物質の放出は罪に問えないとした。菅元首相らの責任は、原子炉格納容器の圧力を下げるベントなどの対応に大きなミスはなく、「嫌疑なし」とした。
福島地検は9日、同地検で受理した福島原発告訴団の告訴・告発を東京地検に移送し、東京地検が処分した。
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