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(40)命の重さ 慰謝料 法律家の闘い 時効の影付きまとう 「消滅」撤廃求め意見書

ADRの申し立て内容について話し合う弁護団員=7月24日、東京都

 東京電力福島第一原発事故からあすで2年半を迎える。民法の損害賠償請求権の消滅時効は3年だ。このままで被害者を救えるのか-。和解仲介に携わる多くの弁護士は、焦りの色を隠せない。
 東電の広瀬直己社長は1月、請求権の消滅期間を過ぎても損害賠償に対応する意思を示した。しかし、法的な保証はない。5月に成立した時効中断に関わる特例法は原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた項目について、和解仲介手続きの打ち切り通知を受けた後、1カ月以内に民事訴訟を提訴した場合に限定している。
 「原発被災者弁護団」副団長の大森秀昭さん(55)=東京都港区=は、特例法の内容に納得がいかない。裁判外紛争解決手続き(ADR)に向き合う遺族の代理人となる弁護士の心理状態が、時間の経過とともに変わってきたと漏らす。「以前は『攻め』。今は『守り』に入らざるを得ない」
 原発事故発生直後の2年前、消滅時効を意識することはなかった。損害算定と原発事故との因果関係を立証しようと必死に手掛かりを探っていた。
 今は、消滅時効を防ぐため、いち早く申し立てをしてもらうことが最優先課題となっている。
 センターへの申し立ては8月末時点で7545件。このうち、「全部和解」まで至ったのは3896件(約52%)。審理が慢性的に遅れ、「3カ月間」をめどとする開設当時の前提は崩れている。センターは仲介委員と調査官を開設当初の2倍を超える395人に増員して対応している。だが、手続き終了までの期間は現在、平均で「約7カ月間」に延びている。
 避難住民は約15万人いる。より多くの被災者に申し立てを勧めたい。かといって時効を前に駆け込み状態になれば、混乱が起きる可能性がある-と悩みを口にする。審理の停滞に拍車を掛ける上、弁護士の不足に陥り、遺族ら本人の申し立てが増えるケースも考えられるという。
 本人が申し立てる割合は現在、約7割を占めているという。東電側には、代理人の弁護士が付く。大森さんは法律の専門家が担当しない申し立てについて「遺族にとって不利な闘いになりかねない」と推測する。
 こうした現状に、センター側も対応する。死亡慰謝料について遺族側が今後一切の請求を行わないという誓約を意味する「清算条項」を付けないようにしている。センターでの和解後も原発事故と死亡との因果関係の新たな証拠があった場合、遺族は再び損害賠償を請求できる。とはいえ、大森さんは「一度和解した金額を増額するのは容易ではない」とみている。
 6月下旬、弁護団は都内で会議を開き、国に対し消滅時効撤廃の特別立法措置などを求める意見書をまとめた。原発事故が収束しないうちは、全ての損害を十分に算定できない、とした。事故の影響は、今後も長引くことが容易に想像できるからだ。
 大森さんは原発事故損害賠償の時効をめぐる国や国会の対応に疑問を投げ掛ける。「一つも被災者に寄り添っていない」。毎月1回、申し立ての検討に集まる弁護団員と議論を尽くしADRに臨む。遺族の切実な思いに報いるためだ。

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