矢吹町で作陶の再開を目指していた大堀相馬焼栖鳳(せいほう)窯の窯元、山田正博さん(63)は8日、山田陶器店矢吹工房の開設式を行った。プレハブ仮設店舗での再起だが、山田さんは「これまでお世話になった方へ恩返ししたい。初日から多くのお客さんが来て、うれしい」と感無量の表情だった。
開設式では山田さんがあいさつし、矢吹町の野崎吉郎町長、栗崎千代松町議会議長、太田美男町商工会長が祝辞を述べた。店舗には次々と陶芸愛好家や町民らが訪れ、矢吹工房で制作した栖鳳窯の茶わんや皿、コーヒーカップなどを品定めしていた。山田さんも買い物客からの質問に笑顔で答えていた。
山田さんは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故のため当初、栖鳳窯のあった浪江町から茨城県つくば市に避難した。同町の自宅周辺が帰還困難区域に再編され、新天地で窯元を再び開設することを決意。震災前から矢吹町で陶器市を開き、顔なじみもいたことから、再開の地に選んだ。
仮設店舗は窯を備えた作業所が約50平方メートル、作品の販売所が約100平方メートル。中小企業基盤整備機構が建設し、事業再開を果たした山田さんに無償で貸した。
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