東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から2年半を迎えるのを前に、5日に福島民報社のインタビューに応じた佐藤雄平知事は、原発事故による避難者の生活再建のため、国は被害の実態を反映した財物(土地・建物)賠償の指針、消滅時効への対応を早期に示す必要があるとの考えを示した。(聞き手・取締役編集局長 佐藤光俊)
―損害賠償の支払いが進んでおらず、実態に即した見直しも必要だ。
「財物賠償における追加的な対応、消滅時効への対応などを早期に示すことが重要だ。原子力損害賠償紛争審査会は本県で見た被害の実態を指針に反映する方向で検討に入っている。実態に見合った賠償を迅速、確実に行ってほしい」
―廃炉作業の前に汚染水問題が立ちはだかる。
「東電だけで対応できる問題ではない。国が前面に立ち、世界の英知を結集すべきと訴えてきた。国家の非常事態との認識で取り組んでもらいたい。県も海域モニタリングの強化を含めて厳しく監視していく」
―町外コミュニティー(仮の町)整備に向けた市町村との協議が進んでいる。
「3700戸の災害公営住宅の早期建設、受け入れ側との地域社会形成などについて、県が主体となって各市町村と個別協議を進めている。国には住宅周辺整備や避難者支援の費用について弾力的な財政措置を要望する」
―国直轄除染計画の大半に遅れが生じ、見直しが必要となった。
「除染は(住民帰還など)将来に関わる。2度と見直しがないよう確実に進めてほしい。除染の加速には仮置き場の確保、地域の実情に合った除染方法の確立などが課題だ。復興の大前提であり、国には森林除染や再除染を含めて徹底した取り組みを求めていく」
―復興には産業の再生が欠かせない。
「津波など直接被害を受けた企業を除き、補助金などで被災企業のほとんどが回復した。ただ、産業全体が地盤沈下している。再生可能エネルギーと医療関連を新産業の柱とし、本県をリードする産業に育てる。国には成長戦略の中でしっかりと支援してほしい」
―農林漁業の再生、風評払拭(ふっしょく)への取り組みは。
「トップセールス、メディアの活用などあらゆる手段で県産農林水産物の安全性とおいしさを伝え、風評を払拭する。試験操業を見送った水産業をはじめ、原発のトラブルは消費者の不安を招く。国には前面に立った対策を要望する」
―長期にわたる県民の健康管理が重要だ。
「内部被ばくの検査結果では、ほぼ全員が一ミリシーベルト未満で、日常生活で放射性セシウムを体内に取り込むことは極めて少ないとみられる。給食や母乳の検査、18歳以下の医療費無料化、高齢者の巡回相談も実施しており、今後も安心して暮らせる環境づくりを目指す」
(カテゴリー:震災から2年6カ月)