南会津地方広域市町村圏組合が平成28年度を目標に進める消防署の再編計画が「白紙」に戻った。消防署を現在の6カ所から3カ所に統廃合する計画だが、どの消防署を廃止するかで町村間の調整がつかず、10日までに計画の協議休止が決まった。現状維持の場合、救急搬送の人員確保などで新たな財源が必要となる。組合は国に財政支援を求めているが、実現は不透明だ。
同組合が23年度に作成した消防署の再編計画の概要は【表】の通り。24年度中に新たな消防署を置く候補地を決め、住民説明、設計を経て26年度に着工予定だった。
町村の担当者による検討委員会や、町村議による組合議会でこれまで一年近く協議を進めてきたが、消防本部を兼ねる東部署と西部署の候補地選びが難航した。再編計画では消防署がなくなる地域が出るためだ。
町村は救急搬送への影響を最も懸念している。高齢化の影響で24年の救急搬送件数は1714件と20年より2割増加している。地元に消防署がなくなることへの住民の不安は大きく、設置場所については各町村とも譲らなかった。
南会津町の担当者は消防本部を兼ねる東部署について「南会津郡の中心部の町内の田島地区が適切」と主張。しかし、下郷町の同組合議会議員も「住民の安全確保のためには当然だが、観光業のためにも地元に必要だ」と町内での存続を訴えた。
一方、西部署の設置場所についても檜枝岐村の関係者は「中山間地の住民の定着のため地元に置いたままにしたい」と求めるのに対し、南会津町側は西部の中心部に位置する町内の伊南地区の配置を要望した。組合などは8月末に現計画での意見集約は難しいと判断し、協議の一時休止を決定した。組合は再編で消防署を減らさなければ、救急出動に必要な隊員を確保できないと説明する。消防庁の指針では救急車1台当たりの救急隊員は3人が望ましいとしているが、面積が広い南会津地方では署を多く配置しなくてはならず、全署に十分な人員を配置できないのが実情だ。実際、一部の署で2人で出動するケースが出ている。
過疎化などの影響で郡内の町村の財政基盤は弱い。構成町村の中心の南会津町が合併10年となる28年度に普通交付税の特例期間が終了し、消防予算の大幅減が見込まれる。老朽化施設の建て替えなどの対応も迫られている。
■国へ支援要望 組合
組合は総務省に財政支援を要望したが、現段階で明確な回答はない。組合議会議員の一人は「財政状況の悪化と現体制の改善の両方に対応するのは町村だけでは困難だ」と国の早急な支援を求めた。
■県の議論、震災後停滞
県は平成22年度に消防本部の統合支援の指針となる「県消防広域化推進計画」を策定し、会津若松、喜多方、南会津の3地方広域消防本部と、福島市、伊達地方の両消防本部を「先行検討地域」として、県が統合を支援する内容を盛り込んだ。しかし、東日本大震災後、統合の議論は事実上、ストップしている。
一方、県によると、県内12消防本部内で既存の消防施設を統廃合する再編の動きは現段階で南会津地方広域消防本部以外にないという。
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