除染によって発生した放射性物質に汚染された土壌を、自宅敷地内などの現場に保管するしかない現状に、住民からは不安の声が上がっている。
二本松市郭内の主婦黒森奈美子さん(35)は一歳の長男をおぶいながら「このままずっと家にあるんだろうなあ」と目を伏せた。昨年末の除染で、庭の表土を剥ぎ取った。今も自宅敷地内に埋めてある。2メートルほど地下にあるとはいえ、「自宅にあるのは嫌」と話す。
除染直後の線量は毎時0・2マイクロシーベルトだったが、現在は同0・3マイクロシーベルトになったという。子どもは長女(7つ)と次女(5つ)もいる。低線量被ばくの健康被害を心配している。
黒森さんは「仮置き場はいつできるのか。中間貯蔵施設は建設されるのか」と憤り、やりきれない思いをこぼした。「無理だとは分かっているけれど、福島第一原発内に運んでほしい」
郡山市で飲食店を経営する高野輝次さん(66)は「いつ回収するのかはっきりして」と困惑する。
店舗兼自宅で出た除去土壌は場所の都合上、店先の駐車場の片隅に置くしかなかった。自家用車を前に止め、客の迷惑にならないようにしているが、店の玄関からは数メートルしか離れていない。
汚染水を貯蔵するタンクからの水漏れのニュースを聞くたびに、「同じように放射性物質が漏れ出すのではないか」と不安に駆られるという。多くの人が出入りする客商売だけに、「営業の邪魔になるので早く回収してほしい」と訴える。
福島市渡利に暮らす自営業上野寛さん(42)は「いつになったら仮置き場に運ばれるのか」と不満を漏らす。住宅除染を今春に済ませた。土砂などを自宅敷地に置いている。
自宅には1歳の孫がいる。「神経質になってはかえってストレスになる」と感じ、これまで通りの生活を心掛けているという。
地域の除染は当初計画よりも遅れており、「今はただ待つしかない」と諦め顔だ。
いわき市佐糠町の会社員男性(49)は自宅の庭が津波の被害に遭った。男性は震災後、塩害を取り除く作業を兼ねた除染作業として庭の土を上下入れ替えた。その後は、汚染土壌の貯蔵場所が決まっていないため、そのままになっている。仮置き場がないため、同地域では震災後側溝の清掃を実施していない。男性は「中間貯蔵施設など汚染土壌の廃棄場所を早く決めてほしい」と庭を見詰めた。
(カテゴリー:震災から2年6カ月)