原発事故による放射性物質に汚染された廃棄物を一時保管する中間貯蔵施設について、環境省から建設予定地として挙げられた楢葉、大熊、双葉の3町では、「不安を感じる」「補償はどうなるのか」など施設へのさまざまな意見が出ている。
■調査、建設進めて
双葉町では、環境省が全町民向けに施設の現地調査事前説明会を県内外で開き、理解を求めた。同町から水戸市に避難している会社員竹村信成さん(52)は、中間貯蔵施設が必要なことは理解していると強調し、「町を離れて新しい場所で生活できるよう、受け入れたときの補償を考えてほしい」と求めている。
一方、同町からいわき市の南台仮設住宅に避難している農業斉藤宗一さん(63)は「最終処分場をどこに建設するのか。進捗(しんちょく)状況がどうなっているのかなどを、国ははっきりと示した上で、調査や建設を進めてもらわなければ困る。古里を離れている身として、先行きに不安を感じる」と訴えた。
■万全の施設で
「放射線量が高いので土地を買い取って中間貯蔵施設を造るというような国の覚悟がなければ、中間貯蔵施設は進まない」。候補地となっている大熊町小入野区の区長根本充春さん(73)は国の姿勢に対する不満を示した。
建設候補地以外では、避難先などに住宅を買い求めた住民もいる。しかし、小入野区の住民は候補地になったことで、今後の生活設計を立てられないという。何度も選んだ理由や詳細エリア、補償方針の説明を国に求めたが、まだ納得いく答えはない。「2年半の避難生活の揚げ句に中間貯蔵施設で足止めだ」とつぶやいた。
自宅の放射線量が高いことや収束が見通せない福島第一原発の現状を見れば、帰還することは無理だと考えている。しかし将来、子や孫の世代が古里に戻れる日が来ることを願っている。中間貯蔵施設の建設を認めたわけではないが、造るなら万全の施設でなければならないと訴える。「汚染水漏れのような問題が起きるようなら、建設は認められない」と話した。
■信じられない
いわき市の仮設住宅に避難する楢葉町の会社員(36)は怒りを抑えながら淡々と語った。「中間貯蔵施設ができたら絶対に古里には帰れない」。新築した自宅は、ローンがまだ数百万円残っている。住んでいない自宅に支払いを続けるむなしさや怒りは、言葉では言い尽くせない。
仮設住宅に30代の妻と就学前の長男、長女と暮らす。原発事故前は自宅の庭で遊び、緑豊かな近くの公園に家族で出掛けることが楽しかった。伸び伸びと子育てができる環境が気に入っていた。
自宅の裏庭は除染後、毎時3マイクロシーベルトから0・25マイクロシーベルトまで下がった。ところが独自に計測したところ場所によっては毎時1マイクロシーベルト前後あった。「除染(の効果)を信じたいが信じられないのが本音」。自宅に一時帰宅するのは大半が自分1人で夫婦で戻るのは3カ月に1度程度。幼いわが子は連れて行かない。
「国は中間貯蔵施設が安全、安心と繰り返すが、信じていいか分からない。子育てを最優先に考えれば、中間貯蔵施設は反対」。生まれ育った古里に戻るか、子どものために新天地に移るか。心の中にわずかに残る望郷の念を、中間貯蔵施設が少しずつ断ち切り始めている。
(カテゴリー:震災から2年6カ月)