本県の農産物の安全性を英国から発信しようと、在英県人会ロンドンしゃくなげ会は10月5日にロンドンで催される「ジャパン祭」で県産米と県産果物のジュースなどを販売する。全農と全農県本部が協力する。一昨年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、全農が県産米を海外に送るのは初めて。同会や全農関係者は「福島の世界的な風評払拭(ふっしょく)につながれば」と期待している。
ジャパン祭は日本の文化や物産を紹介する年1回の大イベント。昨年は約8万5000人が訪れ、にぎわった。
10月のジャパン祭で販売されるのは、県産米「福島天恵米コシヒカリ」と「福島ひとめぼれ」が各140袋(1袋500グラム入り)で計140キロ。他に県産果物を使ったジュース「福島桃の恵み」「福島林檎(りんご)の想い」、野菜ではトマトジュース各60本の他、会津の「冷たいアスパラガスのスープ」もある。ロンドンしゃくなげ会の会員らが市民や観光客らに売り込み、農産物の安全性を説明するチラシを配る。益金は本県の東日本大震災ふくしまこども寄付金に送金する。
ロンドンしゃくなげ会は震災と原発事故後、ジャパン祭で民芸品の「赤べこ」や「起き上がり小法師(こぼし)」、「福島 絆」と書いたTシャツなどを販売し、益金を本県に送るとともに県民の声や復興への思いを英国で訴えてきた。
今回、販売するきっかけとなったのは、今年2月、本県で開かれた在外県人会サミットだった。参加したロンドンしゃくなげ会の満山喜郎会長(白河市大信出身)が県内で放射線モニタリング検査など農産物の安全確保体制を確認。農家が風評に困っている話も聞き、ジャパン祭で安全性をPRできないか考えた。ジャパン祭会場のトラファルガー広場はロンドンの中心部にあり、海外からの観光客らでにぎわうことから、本県の農産物の安全性を伝えるのに効果的と判断した。
ただ、英国で日本の農産物を輸入・販売するにはさまざまな手続きや検査が必要となる。満山会長が関連団体などに協力を呼び掛けたところ、ドイツにある全農デュッセルドルフ事務所の橋詰政之所長(新潟県出身)が賛同。連絡を受けた東京に本部を置く全農の総合企画部が県本部と連携して県産品の提供と検査、輸送を無償で引き受けることになった。13日、サンプルの県産米の放射性物質検査を実施した。
担当した全農総合企画部統括課の塚本憲一調査役(秋田県出身)は「全農として福島県産米を海外に送るのは初めてだ。古里復興のため海外で頑張っている県人会に協力したい」と語った。
満山会長は「東京五輪の招致に際し、原発事故の風評が世界に広がった。福島の農産物が一番安全だということをロンドンから発信したい」と話している。
今回の取り組みについて県県産品振興戦略課は「安全性や品質の高さを海外で理解してもらう絶好の機会になる」と歓迎している。
(カテゴリー:福島第一原発事故)