東日本大震災アーカイブ

燃料状態分からず 取り出し前倒し不透明

 福島第一原発1〜3号機の溶けた燃料の状態は全く分かっていない。政府と東電などでつくる廃炉対策推進会議は今年6月、福島第一原発の廃炉に向けた新たな工程表を示し、1〜3号機の溶けた核燃料の取り出しを従来計画の平成33年末から最大1年半前倒しすることを明らかにした。1、2号機では最速で7年後の32年度前半の取り出し開始とする。ただ、取り出すための研究もまだ研究段階で、取り出し時期を前倒しできるかは不透明だ。

 1号機は、使用済み燃料を搬出するためのコンテナを設置し、改造を施して溶融燃料の取り出しにも使う計画を練る。ただ、建屋の耐震安全性が不十分な場合は、建屋全体を覆う構造物にクレーンを設置することになり、取り出し開始は34年度下半期にずれ込むとしている。

 2号機は既存の設備を復旧できる場合、32年度前半に取り出しを開始するとした。耐震性が不足する場合は1号機と同様の手法を採用し、取り出し開始は36年度前半と最も遅くなる。

 3号機は建屋の耐震性などを分析した結果、取り出し開始は33年度後半から35年度後半となる。

 ただ、原子炉建屋内は放射線量が高く、内部の様子は確認できていない状況だ。原子炉溶融によって原子炉圧力容器から格納容器の底に溶け落ちた燃料の状況も不明だ。

 経産省は26年度予算の概算要求で、溶融燃料の取り出しに必要な遠隔操作ロボットの開発費用などで125億円を盛り込んでいる。

 1〜4号機の使用済み燃料プールには現在、計3106体の燃料があり、4号機がほぼ半数の1533体を占める。燃料取り出しは、原子炉に燃料がない4号機で今年11月に着手。1〜3号機もそれぞれ27年度前半以降に取り出しを始める見通しだ。

 取り出しの作業手順は、クレーンを使い、プール内で燃料輸送用の容器に燃料を装填(そうてん)。引き上げてトレーラーに載せ、約100メートル離れた「共用プール」と呼ばれる別棟に移す。完了はそれぞれ取り出し開始から1年後の見込みだ。

 取り出しのための機器を備えた建屋カバーはほぼ完成した。移送先に空きスペースを確保するため、共用プールに保管されていた燃料は「乾式キャスク」と呼ばれる空冷式の鋼鉄製容器に入れ、屋外の保管施設に移す作業も進めている。

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