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【地震・津波の災害公営住宅】 家賃の地域格差懸念 一部市町、独自に減額方針 国に支援求める声

 東日本大震災の地震・津波被災者向けの災害公営住宅入居者への家賃支援で、市町間格差が生じる懸念が出ている。現在、住宅を建設する11市町のうち、5市町が独自に家賃を減額する方向で調整している。国が低所得者に対し家賃支援するのを受け、その対象から外れる世帯の不平等感を解消するためだが、市町間の対応がばらつく結果になりかねない。さらに、独自の支援は財政を圧迫する。関係市町村からは国に手厚い支援を求める声が上がっている。

■広がる施策
 いわき市は既に全入居者の家賃を減額することを決めた。住宅完成から3年間を半額とし、4、5年目は一定の収入条件を満たせば25%減額する。例えば、夫婦と子ども2人の世帯で夫のみが働き、年収419万~447万円の場合、家賃(3LDK)は月額4万5100円だが、3年目まで半額の2万2500円となる。
 低所得者は国の減額措置に加え、市の支援も受けられる。整備予定の約1500戸全てに入居すれば5年間で総額7億8000万円の減額になり、市の財源で手当てしなければならない。
 相馬、広野、楢葉、新地の4市町も独自支援に向けて検討に入っている。このうち、約50戸の整備計画がある広野町は、いわき市と同じ減額割合での試算を終えた。5年間で数千万円が必要になるため、減額割合を含めて調整している。
 新地町は整備する約130戸のうち、4割程度が国の支援対象外になるとみている。町は「対象から外れた人から不満が出かねない」と独自支援に前向きだが、どの程度財源を確保できるかは不透明。「仮設住宅からの住み替えを進めるためにも、国の幅広い支援が必要」と訴える。

■異なる対応
 地震・津波被災者向けの災害公営住宅は独自支援を検討している5市町のほか、白河、須賀川、南相馬、桑折、鏡石、矢吹の6市町でも整備予定がある。
 沿岸部の津波被害が大きい南相馬市は350戸整備する予定だ。「これから家賃変更するのは難しい」。市担当者は現時点で独自支援を検討していないことを明かした。既に住民説明会などで家賃の目安を公表しており、金額の変更によって新たな入居希望者が出る可能性があるという。
 地震被害が中心の中通りの市町は独自支援に消極的だ。生活再建への負担が津波被災地ほど大きくないことなどを理由に挙げる。
 県外でも対応は分かれる。宮城県によると、住宅整備予定がある21市町で独自策を設けるのは名取市と女川町のみ。沿岸部は復旧に多額の費用が掛かり、独自支援の財源捻出が難しいという。
 津波で自宅を流された南相馬市の無職男性(63)は「同じ津波被災者で差が出るのはおかしい。国が一律に支援すべき」と指摘する。

■低所得者対策
 国の低所得者向けの支援事業は、世帯所得から各種控除などを引いた月収(基準収入)が8万円以下の世帯を対象とする。完成から5年間は従来の家賃よりも少ない一定額に据え置く。6年目から段階的に引き上げ、11年目以降は従来の家賃になる制度だ。
 この制度は東京電力福島第一原発事故の避難者向け住宅にも適用される見込みだ。ただ、原発事故避難者の家賃は原則、東電の賠償対象となるとみられており、県は独自支援の導入は検討していない。

【背景】
 地震・津波被災者向けの災害公営住宅の11市町の整備計画は【表】の通り。既に相馬市で入居が始まっている。家賃は従来の公営住宅と同じで、立地場所や面積、入居者の収入で決まる。このほか、原発事故避難者向けに3700戸の建設計画がある。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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