県が14日に発表した県内の農業用ダム・ため池の土壌の放射性物資検査で、指定廃棄物の基準(1キロ当たり8000ベクレル超)を超える放射性セシウムが検出された。ただ、環境省は農業用ダム・ため池を除染対象としておらず、国の財政支援を受けられないのが実情だ。県は緊急対策として土砂の拡散防止対策に乗り出す。
同省は、たまった水に放射性セシウムが発する放射線の遮蔽(しゃへい)効果があり、周辺環境に与える影響は小さいと指摘する。現在は陸上の除染を優先しており、担当者は「現時点で、ダムやため池を除染対象に加える予定はない」と説明している。一方、農林水産省は「実態をきちんと把握し、対策を進めていく必要がある」とし、除染の必要性など省庁によって認識が異なる。
県によると、農業用ダムやため池には周辺の山などから放射性物質を含む土砂が流入している。通常だと2~3年に一度、農閑期に水を抜き、底にたまった土砂を取り除いて貯水容量を確保している。しかし、東京電力福島第一原発事故後は、土砂の仮置き場がないため作業の自粛を管理する市町村や農業団体に要請している。
県のこれまでの調査では全3730カ所のうち、1割の370カ所程度で、速やかに土砂を上げないと、排水口がふさがれる可能性があると推測している。発生する土砂は合計1万4800立方メートル、費用は約17億円かかると見込む。
県は土砂の拡散を防ぐ対策として、一部のダムやため池で、濁り水による拡散防止のため「シルトフェンス」と呼ばれる水中カーテンを設置する。環境負荷の少ない薬剤で土壌を固め、拡散を防ぐ作業も進める方針。
県農地管理課の菊地和明課長は「調査結果を基に、環境省に除染の必要性を強く訴える」と話している。
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