東日本大震災アーカイブ

「健康管理」県民健康管理調査検討委員会座長 星北斗氏に聞く 科学的検証が安心感に

■基本調査の見直し必要

 県民健康管理調査の現状や今後の課題について、県民健康管理調査検討委員会座長(星総合病院理事長)の星北斗氏(49)に聞いた。

 −調査を実施している意義は。

 「ホールボディーカウンターによる内部被ばく検査や問診票による外部被ばく線量推計で、個人が原発事故により、どれくらい放射線の影響を受けたのかを長期的に観察する必要がある。震災前から本県は他県に比べ、がん検診の受診率が低く、糖尿病など生活習慣病発症の頻度が高い。健康調査を通じて現状を把握し、適切な健康管理につなげる狙いもある」
 −調査の進捗(しんちょく)状況は。

 「甲状腺検査で甲状腺がんと確定、あるいは疑いのある受診者は74人(昨年12月末現在)となっている。多くの人は原発事故と発症との因果関係を心配している。チェルノブイリ原発事故では、事故の4年後ぐらいから甲状腺がんの患者が増えたとの報告がある。これまでの科学的な知見に照らせば、福島では甲状腺がんは起こりにくいと考えられる。ただ、低線量下に長期間さらされる経験はない。長期的に見守り、科学的な根拠を示すことで県民の安心感につながる」
 −調査を継続する上での課題は。

 「基本調査の問診票の回答率が低迷している。県は昨年から簡易版の問診票の送付を開始したが、抜本的に対策を見直す必要があると感じている。現在は任意で問診票の提出を求めているが、回答率は伸びない。担当者が未提出者に聞き取りをして直接記入したり、集落単位で提出してもらうなど対策が考えられる。甲状腺検査の対象は震災時、18歳以下が対象だが、その後、就職や進学した人の受診率が低い。18歳以上は甲状腺がんの発症率が高くなるとされている。未受診によりデータが抜け落ちると今後、比較検討する素材が乏しくなる。病気は早期発見、早期治療が欠かせない。仮設住宅などの巡回による受診機会の提供も必要になる」
 −今後、どのような改善点が必要か。

 「病気の早期発見、早期治療は個人の利益につながる。健康管理調査は県民が健康への意識を高め、自ら健康増進を図っていくきっかけになる。全県民を対象にした健康調査は福島でしか行われていない。調査を通じ『福島が全国一健康な県』を目指していくべきだ。時間の経過とともに県民の興味、関心が低くなる。行政や医療機関には、受診率が下がらないための理解促進の事業実施や広報が大事になる」

 ほし・ほくと 郡山市出身。安積高、東邦大医学部卒。平成元年4月、医系技官として旧厚生省入省。8年から米国に留学。20年12月から星総合病院理事長。日本医師会常任理事を務めた。現在、県医師会常任理事、郡山医師会理事。

カテゴリー:震災から3年