創業から半世紀を迎えた福島県いわき市の老舗かまぼこ製造メーカー「夕月」。おせち料理用の紅白かまぼこの生産で全国に名を知られる。市内泉町の同社直売店「美味一膳」の清水淳子店長(50)は「風評との闘いが続くが、夕月の名前は県産ブランドとして守り抜く」と誓う。
東日本大震災前の津波で、いわき市中之作の倉庫にあった、かまぼこの原料となるスケトウダラなどの冷凍すり身約200トンを失った。その後、東京電力福島第一原発事故の影響で物流が止まり、材料を手に入れることもできなかった。水道などが復旧して生産を再開できたのは約2カ月後のことだった。
震災前、関東圏の高級スーパーの棚に夕月のコーナーを構え、人気を集めていた。商品を出荷できなくなり、棚には他社の商品が並ぶようになった。清水店長は「2カ月間出荷できなかった影響は大きかった。信頼を回復させ、元のように商品を並べるのに1年近くかかった」とこれまでの苦労を振り返る。震災前の水準まで至っていないが、「必ず巻き返す」と意気込む。
4月から新商品「美海(みう)」を発売する。県の地場産業リーディングプロジェクト創出事業の一環で開発した。これまでの生産方法と異なり、原料や味を見直して職人が一つ一つ手作りする高級かまぼこだ。関東圏でのテスト販売でも手応えを得ている。これまでの流通先に加え、新たな顧客を開拓することで、全国に「いわきのかまぼこ」を発信する。
■夕月かまぼこ直売店「美味一膳」
営業時間は午前9時30分から午後5時まで。住所はいわき市泉町滝尻字松原55。問い合わせはフリーダイヤル(0120)789511へ。
(カテゴリー:震災から3年)