東京電力福島第一原発の汚染水対策で、原子炉建屋に入る前の地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス計画」について、結論を持ち越していた相馬双葉漁協は24日、計画を受け入れる方針を決めた。いわき市漁協は受け入れの方向で意見集約しており、試験操業に取り組む主要2漁協の方針が一致した。県漁連は25日の県漁協組合長会議で計画実施に向け、要望書を東電、国へ提出、回答を見て最終判断する。地下水バイパス計画は実施に向け大きく前進した。
■安全対策見極め最終判断
相馬双葉漁協は相馬市の松川浦支所で開いた支所長会議で対応を協議した。理事を務める7支所長のうち、松川浦(相馬市)を除く6支所長が出席した。
冒頭以外は非公開で、佐藤弘行組合長によると全会一致で計画実施を受け入れた。18日の前回理事会で唯一、反対の立場を取った請戸支所(浪江町)も、地下水バイパスを実施しなければ、高濃度汚染水が増加し、処理が追い付かずに海洋に放出される懸念があることなどを理由に容認に回った。
実施に当たっては、東電と国に対し、海洋モニタリングの強化や風評被害が出た場合の賠償、第三者機関による安全性の監視などを求めることを確認。モニタリング結果などの正確な情報発信や1年ごとの検証作業なども盛り込む予定だ。
第一原発の汚染水対策は喫緊の課題で、東電は要望に対し、前向きな回答をするとみられる。
佐藤組合長は「汚染水をためる地上タンクが満杯になることは分かっている。漁業者として見て見ぬふりはできない」と海洋汚染を未然に防ぐための苦渋の判断であることを強調した。
県漁協組合長会議はいわき市の県水産会館で開かれる。相馬双葉漁協の方針決定を受け、いわき市漁協の矢吹正一組合長は「要望に対する東電と国の回答を見極め、計画受け入れを最終判断したい」とした。
■東電「漁業者に丁寧に説明」
東電の福島復興本社福島広報部は相馬双葉漁協といわき市漁協が計画受け入れで方針が一致したことについて、「漁業者に計画を理解してもらえるよう丁寧に説明したい」とコメントした。
東電とともに漁業関係者と協議を続けている経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「漁業者が不安を抱いていることは理解している。漁業者に納得してもらえるように対応していく」と語った。
地下水バイパス計画をめぐっては、東電は昨年5月の組合長会議で計画に理解を求めたが、風評被害を懸念する漁業者からの反発が相次ぎ、調整を続けていた。
※東電の地下水バイパス計画 福島第一原発の山側から海側に向かって流れている地下水を原子炉建屋に流れ込む前に山側の井戸でくみ上げ、水質確認をした上で海に放水する計画。東電は、建屋に流れ込み汚染水となっている地下水400トン(1日当たり)を300トンに減らせるとしている。
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