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【富岡の行政区】活動費確保に苦心 避難、区費徴収できず

行政区住民への連絡文書郵送の準備をする渡辺さん。行政区の財政難に頭を痛めている

 東京電力福島第一原発事故により避難区域となった富岡町の行政区運営が苦境に立っている。避難住民から区費を徴収できず、住民の絆を保つ活動などの財源確保に苦心する。行政区は帰還を見据えた要望の集約や自宅周辺の情報収集などに重要な役割を果たす。行政区の中には運営費を捻出しようと、原発事故前に毎年実施してきた草刈りや廃品回収の収入分を東電に賠償請求する動きが広がっている。

廃品回収 草刈り 収入分を賠償請求

■財源を捻出
 「何とか財源を確保しなければならないという思いで損害賠償に踏み切った」。富岡町毛萱行政区の佐藤謙一区長(68)は行政区運営の厳しさを口にした。同行政区は昨年12月、河川敷の草刈りの収入分として約30万円の支払いを受けた。
 行政区は、県内外に避難している住民が一時帰宅した際に得た自宅周辺の情報を交換したり、帰還や復興に向けた要望を集約、調整したりする役目を担う。また、昔なじみとの絆が厳しい避難生活を乗り切る精神的な支えになっている。
 「原発事故前のつながりを消してはいけない」。その思いは日に日に強まるが、行政区の財政難は改善しない。約30世帯から徴収していた区費がないためだ。今後は区費についても損害賠償請求できないか検討中だ。
 同町には他にも同様の請求を検討している行政区があり、町は東電に対し、行政区活動に関する賠償の基準を示すよう求めている。

■郵送費5万円
 郡山市の借り上げ住宅。避難住民向けの案内文書を入れた封書が積み上がる。富岡町中央行政区の渡辺鉄男区長(63)は投函(とうかん)の準備をしながら実情を訴えた。「郵送費だけでもばかにならない」
 同区には約200世帯があり、複数の文書を全員に郵送すると、切手代だけで5万円程度にも上るという。総会を開くにも会場費などに約10万円が必要だ。
 原発事故前には区費を各世帯から年2000円徴収していたが、避難中で行政区内に居住していない以上、集めるわけにはいかないと考えている。原発事故前の会計残金を切り崩し、地元団体からの助成金を使ってやりくりをしているが、いずれは底を突く。総会の際に出席者から会費を徴収せざるを得ないという。
 「行政区がなくなれば、町のまとまりにも影響してしまう」。渡辺さんは行政区に対する国の支援の必要性を指摘する。4月30日には東電に対し、廃品回収や地域の河川敷の草刈り作業による年間の収入分計約60万円の損害賠償を請求した。
 町は平成26年度、全27行政区に対し、活動を支援する助成金を支給する。町担当者は「いずれ町に帰還することを考えれば、行政区をなくすことはできない。コミュニティーを維持する活動を一層進めてほしい」と行政区を重視する姿勢を示す。

■特例措置を
 富岡町清水行政区の役員らは、区内約280世帯のうち、約60世帯の連絡先が把握できていない。
 町は個人情報保護法を理由に、行政区に対し、住民の避難先などの情報提供は、本人の承諾が得られたケースに限っている。猪狩浩区長(70)は「総会の案内を出すなど、情報の使い道は限定的。行政区だけにでも特例で住民の避難場所を教えてほしい」と訴える。

■旅費を補助
 富岡町以外でも行政区の活動を後押しする避難区域を抱える自治体が出ている。
 双葉町は26年度、町民が行政区の総会に参加するための旅費の一部を補助する。南相馬市は25年度、住民の2分の1以上が避難している行政区や仮設住宅の自治会などに対し、総会や交流会などの開催経費を上限10万円で補助しており、26年度は全行政区に対象を拡大した。
 住民の連絡先が分からない悩みも同様だ。浪江町では行政区から「避難場所が分からないので区民への連絡が徹底できない」との声が多く寄せられている。楢葉町は行政区に代わって文書を郵送する対応を取っている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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