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(76)歯止め 支援の現場から 少人数の活動に限界 借り上げ住宅訪問難航

チェックシートに高齢者らの家族構成や持病、緊急連絡先などを記入する門馬さん(手前)。避難者全体の状況を把握するには遠く及ばない

 「調子はどうですか」「ちゃんと食べてますか」。5月中旬、浪江町社会福祉協議会の生活支援相談員門馬幸枝さん(48)は、町民が暮らす二本松市の安達運動場仮設住宅で入居者に話し掛けた。
 健康状態が気掛かりな人がいる。80代の1人暮らしの男性は以前、つまずいて転倒し右手の人さし指が腫れたままだ。医者に行くよう勧めているが「病院嫌い」を理由に応じない。
 男性は東京電力福島第一原発事故前は息子夫婦、孫と5人で暮らしていた。息子夫婦は県南地方で暮らし始め、男性は仮設住宅に落ち着いた。にぎやかな生活が一転した。話し相手が減った。身の回りの世話を焼いてくれた家族が懐かしい。心にぽっかりと穴が開いたようだった。
 門馬さんは1人暮らし高齢者を中心に心労をためこむケースが多いとみる。「胸の内を酌み取ってあげないと不安と悩みに押しつぶされる」

 仮設住宅を離れ、アパートや一戸建て住宅などの借り上げ住宅で暮らす町民も多い。町社会福祉協議会は福島、二本松、郡山など中通りを中心とした借り上げ住宅での訪問活動も実施しているが、仮設住宅以上に見守り活動は困難を極める。17人の生活支援相談員が約2000世帯を受け持つ。留守で会えない時も多い。気持ちは焦るが、既に原発事故から3年余りが過ぎた。「1回目の訪問でさえ、いつ終わるか分からない」
 生活支援相談員は情報を共有し、見守り活動に生かすため独自にチェックシートを作った。訪問活動が終わる平日の午後3時すぎごろから、町役場二本松事務所に隣接した町社会福祉協議会の事務所で、入居者の家族構成、緊急連絡先、持病、薬の服用状況、言動で気になったことなどを記入している。高齢者世帯、1人暮らし世帯への訪問活動が中心となっている。避難者全体の状況を把握するには遠く及ばない。
 門馬さん方は浪江町で小売店を経営していた。原発事故発生後、実家のある栃木県に一時、避難した。事故から約1カ月後には本県に戻り、二本松市で暮らしている。平成23年9月、町社会福祉協議会が生活支援相談員を募集していることを知り、「誰かの役に立てれば」と応募した。避難生活が長引き、急激な環境変化に対応できず体調を崩す町民が相次いでいた。
 福祉に関する資格はない。訪問活動を通じて入居者との信頼関係を築いている。「答えは見えない。勉強しながら成長したい」。手探りの日々が続く。

 社会福祉協議会の事務所には、相談員がびっしりと書き込んだチェックシートが積み重なる。「この人員でできる見守り活動には限界がある。対象を広げ、今以上に体調不良や精神的な悩みを抱える支援対象者が増えても対応できない」。生活支援相談員で統括チーフの池崎悟さん(40)は、ため息をついた。現状を受け止めるしかなかった。
 門馬さんは、ある対象者のチェックシートを書き上げ、ため息をついた。ジレンマに心が乱される。「まだまだ被災町民への支援は行き届いていない。それを待っている町民がもっといるのに...」

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