広野町下北迫の新妻歯科医院は3日、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、約3年4カ月ぶりに診療を再開した。院長の新妻俊商(としあき)さん(58)は、「多くの人が待っていてくれてうれしい。恩返しの気持ちで頑張りたい」と話した。
開院前から約20人が列をつくり、午前中は予約の患者で待合室がいっぱいになった。震災後、いわき市などの歯科医院へ通っていた町民も多く、「先生にまた診てもらえてうれしい」「遠くまで行かなくてよくなり、助かる」と喜んでいた。
歯科医がいなかった昭和59年に開業し、地域にはなくてはならない存在になった。震災時の津波で医院と自宅は床下浸水し、自宅は取り壊した。一時東京に避難したが、平成23年8月に福島市町庭坂で開業した。避難先のいわき市から訪れる町民もいる。
広野町での診療は、当面は毎週木曜日の午前9時半から午後6時まで。スタッフは4人で、このうち助手の2人は福島の医院から新妻さんと一緒に車で通う。
「福島でも患者さんにとてもよくしてもらっている」と新妻さん。妻の明美さん(56)らを東京に残し単身赴任している。それを知った地域の住民から野菜などの差し入れが届くという。
長男の瑞樹さん(23)は歯科医師を目指し、横浜市の大学に通っている。「将来は2人で福島と広野の医院を切り盛りできればうれしい」と夢を膨らませている。
医院への予約は電話0240(27)4020へ。不在の場合は福島の医院に転送される。
(カテゴリー:福島第一原発事故)