日本原子力研究開発機構(JAEA)は、農業用ダム・ため池の底土に含む放射性セシウム濃度を、底土を採取せずに測定し、放射能分布図を作成する技術を開発した。効率的な除染への活用が期待される。3日、JAEAの関係者らが県庁で記者会見して発表した。
新技術は、放射線を感知する、ひも状の検出器を利用する。ため池底土の放射性物質濃度を面的に測定できるため、分布図の作成が容易になった。放射性物質濃度が高い部分の土壌を除去する効果的な除染が期待される。さらに、除染後の効果の確認にも活用できる。
これまで分布図作成には、一つのため池の多くの場所で庭土を採取する必要があった上、採取した底土の処分が課題になっていた。JAEAは水土里(みどり)ネット福島(県土地改良事業団体連合会)と技術指導契約を結び、福島市など県内10カ所のため池で昨年4月から適用試験を行い、新技術を確立した。
県庁で会見したJAEA福島環境安全センター放射線計測技術グループの真田幸尚技術副主幹は「ため池の放射性物質対策で、今後も必要な技術開発とサポートをしていく」と語った。同席した水土里ネット福島の小林剛参事兼総務企画部長は新技術について「効率的な放射性物質対策に活用していきたい」としている。
県内3730カ所の農業用ダム、ため池のうち、1940カ所で県と農林水産省が放射性物質検査を実施した結果、576カ所の底土から指定廃棄物(1キロ当たり8000ベクレル超)に相当する放射性セシウムが検出された。復興庁は農業復興の観点から、ため池除染を「福島再生加速化交付金」の対象に追加した。農林水産省は、ため池の放射性物質対策マニュアル作りを進めている。
県や市町村は交付金やマニュアルを活用し、今秋にも除染を始める予定。
(カテゴリー:福島第一原発事故)