東日本大震災

「震災から3年5カ月」アーカイブ

  • Check

識者の目 福島から新しいモデルを 原発事故の避難計画策定 ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長兼研究調査本部長 室崎益輝さん

 原子力規制委員会の原子力災害対策指針は、原発から半径30キロ圏内の市町村を対象に避難計画を策定するよう求めている。県内では福島第一、福島第二原発周辺の13市町村が対象になっているが、策定したのはいわき、南相馬、川俣、広野の4市町にとどまる。地域防災計画の専門家であるひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長兼研究調査本部長の室崎益輝さんは円滑に避難する上で、地形や風向きを考慮した移動手段、経路選定の重要性を指摘した。

 -避難計画の策定が進んでいない。

 「明日にでも地震が起き、再び津波が来たら大変なことになる。速やかに現時点でのベストの計画を作るべきだ。計画の空白期間があっては絶対にいけない。計画を作ることで、課題が見えてくる。計画を作るには、放射性物質についての理解と災害の避難計画の2つの総合的な視点が必要になる。各分野の専門家が協力して、あらゆる条件や可能性を議論し、最適な答えを出す。現在、策定できていない理由はどこにあるのかを明らかにし、国や県が策定に向け市町村を支援すべきだ」

 -避難計画策定は原発から30キロ圏内で大丈夫か。

 「30キロというのは絶対条件ではない。地形とか、風向きとか、それぞれの地域の状況や実体に合わせて範囲を決めるべきだ。画一的な考えではなく避難の『必要性と可能性』を考慮することが重要。非現実的な計画を作っても仕方ない。計画策定で一番問題になるのは、避難のための移動の手段と経路の問題。大渋滞が起きたら動けなくなるとか、道路網が整備されていないとか。あらゆる可能性をシミュレーションして、総合的に考える。杓子(しゃくし)定規に考えると答えは出てこない」

 -天候条件は計画策定に加味すべきか。

 「天候はとても大切な要素となる。計画段階で、さまざまな天候条件を検討しなければならない。風の向きや強さを考慮し、放射性物質の拡散方向を予想し、避難先や方法を考える。放射性物質の拡散と避難の想定を重ねて避難計画に反映させるべきだ」

 -計画は地方自治体が定めるべきか。

 「計画は市町村が作るべきと考える。それが地方自治体としての責任だ。ただ、市町村の相互の連携が必要になるので、市町村間が連携する協議会的な仕組みを作り、広域的に検討する。個々の市町村では判断できない問題に対し、国や専門家の協力も不可欠だ。日本の最先端の英知を集めないといけない。いろんな防災技術の知能を集め、安全な計画を作るという覚悟が必要。たくさんの人の命が関わる問題なので、総力を尽くして高度な避難計画を作るのは責務だ」

 -本県はどのように避難計画を策定していくべきか。

 「震災と原発事故からの避難という経験をした福島県民が、一番避難の課題を知っている。福島県民が経験した知恵を次の防災対策に生かしてほしい。原発被災県としての責任は、原発禍を乗り越え、新しい避難計画のモデルを示すことだと思う。福島県から世界に向け、福島方式ともいうべき避難計画の新しい形を世界に発信してほしい。福島県だからこそ、発信できることがある。世界の目標となるような人命優先にした避難計画を作ることが求められる」

 むろさき よしてる 兵庫県尼崎市出身。京都大工学部卒。京都大大学院工学研究科修士課程(建築学専攻)修了。工学博士。昭和62年、神戸大工学部教授となり、神戸大都市安全研究センター教授、独立行政法人消防研究所理事長、総務省消防庁消防研究センター所長、関西学院大災害復興制度研究所所長などを歴任。現在、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長兼研究調査本部長。69歳。

カテゴリー:震災から3年5カ月

「震災から3年5カ月」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧