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今を生きる 避難者の健康守る 仮設住宅で巡回教室 ボランティアで対話、相談

避難者に健康管理を指導する及川さん(右)=南相馬市・高見町第一仮設住宅

■南相馬市立総合病院副院長 及川友好さん 54

 南相馬市の仮設住宅集会所に、入居者を励ます同市立総合病院副院長・及川友好さん(54)の明るい声が響く。病院での診療を終えた夜間、ボランティアで定期的に巡回健康教室を開き、病気などの相談に応じている。長期の避難生活を強いられているお年寄りらの体調管理が課題となる中、「医療人として住民の幸せのために尽くす」と誓う。
 「元気だったかい」。南相馬市原町区の高見町第一仮設住宅集会所に及川さんが姿を見せた。入居者に笑顔が広がる。この日の教室は、加齢などによって運動機能が衰える「ロコモティブ症候群」についての講演だ。時折、冗談を挟みながら難しい医学の話を分かりやすく解説する。講座の後には出席者からの質問に丁寧に答えた。
 東京電力福島第一原発事故で同市小高区から避難している石倉タカ子さん(83)は「教室に参加することが生活の張りになっている」と声を弾ませた。
 及川さんは市内8カ所の仮設住宅をそれぞれ2カ月に一度の割合で訪れ健康教室を開いてきた。これまでの出席者は延べ約2000人に上る。市立総合病院での診療や手術など、副院長としての業務を終えてから出掛けていく。対話することで健康に不安を覚えているお年寄りの心を和らげる。尿検査や血圧、体力測定なども行っている。
 若い研修医をはじめ同僚の医師らが同行し、活動をサポートしている。「支援があるから続けられる」。及川さんを中心に南相馬市の避難者を見守る輪が広がってきた。
 及川さんを突き動かしているのは、医師としての強い責任感だ。市立総合病院は東京電力福島第一原発から約23キロの位置にある。原発事故発生直後は一時、死を覚悟していたという。「自分は医療人。患者を置いて逃げるわけにはいかなかった」。市民であふれた避難所で医療支援活動を開始した。「市避難所連絡会議」を設け、全国から訪れた医療ボランティアを避難所に送り込んだ。
 避難所閉鎖後も、仮設住宅に避難している人たちが自分を必要としてくれているとの思いから健康教室を続けている。「被災者にこれ以上の不幸があってはならない。そのために頑張る」
 及川さんはいわき市出身。磐城高、福島医大医学部卒。専門は脳神経外科で、平成19年8月に南相馬市立総合病院副院長に就任した。25年4月から広島大大学院客員教授を務めている。

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