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今を生きる 津波犠牲、同僚の遺志継ぎ 県民守る使命新世代に託す

後輩に警察官の責任と使命を伝える伊藤さん(右)

■県警察学校教官 伊藤太幸さん 37

 「県民の安全を確保する使命感を後輩に伝えたい」。県警察学校の教官伊藤太幸(たいこう)さん(37)=警部補=は、新人巡査の指導を担当し4年目を迎えた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生時は双葉署に勤務し、津波から住民を守るため出動した同僚2人を失った。涙を胸の奧にしまい、警察官の責任と役割を語りながら日々、生徒と向き合う。
 教室には、これから本格的に警察官の道を歩む生徒たちの輝きに満ちた目が待つ。受け持っているのは、今年春に採用された初任科長期課程の73人。交通取り締まりや交通事故捜査の手法を講義しながら、自らの震災体験に触れる。「大災害の記憶を風化させたくない。県民の暮らしに寄り添う警察官を育てる」。教壇で、熱い思いが青年教官の体中を駆け巡る。
 平成23年3月11日-。双葉署地域交通課に勤務していた伊藤さんは、管内の被害状況の確認に追われた。穏やかな浜辺のまちは津波の濁流にのまれ、多くの犠牲者が出た。住民から助けを求める電話が署に殺到した。「1人でも多くの命を救いたい」と地域を駆け回った。
 同じ課の同僚2人は住民に避難を呼び掛けるため沿岸部に向かい、津波にのまれた。2人とも地域の安全・安心確保のために率先して動く志の高い警察官だった。伊藤さんは「命を賭して職務を全うした仲間の遺志を受け継いでいく」と誓った。
 7カ月後の10月、福島市の県警察学校に異動した。被災地の最前線で働き続けたいとの思いはあったが、若手警察官の育成が復興に必要だと気持ちを切り替えた。体験をありのまま語ろうと心を決めた。
 震災当時の現場の様子を話すと、生徒の表情が引き締まる。混乱の中で警察官の取った行動や教訓をもっと詳しく知りたいと質問も出る。
 授業を受けている三鈷(さんこ)満さん(24)は「自分が今後、災害に遭遇したとき、最善の判断ができるよう、常に覚悟を持って職務に励んでいきたい」と話す。
 伊藤さんには大きな夢がある。「教え子と一緒に働きたい。みんなで地域のために汗を流し、復興を見届けたい」

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