会津若松市観光課の職員は来春の大型観光企画・デスティネーションキャンペーン(DC)を教育旅行復活のきっかけにする青写真を描く。
DCは県や市町村がJRと協力し、全国に地域の魅力を発信する大型観光企画だ。来年4~6月に県内全域で展開する。観光課長の長谷川健二郎(52)は「もてなす市民の盛り上がりが成功の鍵を握る」と見ている。
8月下旬。市や交通機関、観光、商工業など各種団体の代表が市内でDC推進会議を開いた。花を活用し観光客を迎える案が出る。「参加する市民を増やすにはどうすればいいのか」。担当者を中心に観光課職員20人は企画を練った。花のしおりを来訪者へプレゼントし、つり花で街を彩る...。早速、しおり作りや、つり花教室を催した。花によるもてなし事業への参加を呼び掛けたところ、協力する団体は次第に増えた。現在、7団体がそれぞれに歓迎方法を考えている。
観光課は会津若松商工会議所の事業に注目している。会議所は「会津遺産」として会津弁を選び、よく使われる言葉を冊子にまとめた。「ゆっくりしてがんしょ」は昨年の大河ドラマ「八重の桜」で知られるようになった。温かみのある「本物」の会津弁で迎えれば必ず観光客の心をつかむはず-。観光課職員は市民を巻き込んだ会津弁の活用方法を探っている。
DCへの懸念はある。今春繰り広げたプレキャンペーンの来場者からは、来春のDCで実際に訪れる数が見通せないためだ。市民から「盛り上がりに欠ける」との声が出るのも、確実な来訪者数が予想できないのが背景にある。
平成17年に会津地方で実施した「あいづDC」は、19年まで観光客が増加するなど効果が続き、県内外から「大成功」と評された。しかし、10年近くの間に全国でさまざまなDCが繰り広げられ、観光客は魅力を感じにくくなっている。長谷川は、会津の持つおもてなしの心こそが観光客を呼び寄せる力になると読む。
来春のDCは市を挙げて歓迎し会津の魅力を伝える。放射線への不安を根気強く取り除く。その先に教育旅行の回復がある。「観光の復活は郷土の誇りの復活につながる。会津若松が先駆け、福島の誇りが全県に広まるDCにしたい」。長谷川はDCを県内の本格的な観光復興の転機と捉えている。(文中敬称略)
(カテゴリー:復興への闘い)