東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11日で3年9カ月となる。除染や中間貯蔵施設整備の動きが本格化する中、本県農林水産物への風評は拭い切れていない。県や市町村は風評対策を重点的に進めている。本県の産業界は、かつての信頼回復に向け、奮闘を続ける。
郡山市の農業柳沼宏幸さん(58)は水稲とイチゴの栽培に取り組んでいる。30年ほど前に始めたイチゴ栽培は現在、ビニールハウス12棟・27アールに及び、年間約7トンを出荷している。栽培品種は「ふくはる香」で、出荷時期は12月下旬から翌年5月まで。出荷前にJA郡山市の施設で放射性物質のモニタリング検査を行う。
原発事故から一カ月後の平成23年4月。柳沼さんが出荷したイチゴの市場価格が、震災前の300グラム(1パック)350円から百円余り下落した。「福島県産というだけで敬遠されたのではないか。風評の影響を感じた」と振り返る。現在、市場の価格は震災前の状態にほぼ戻りつつあるが、それでも出荷数量が多い時は、バイヤーは県外産を買う傾向が残っているという。
一方、5年前から始めた自宅での直売は年々売り上げを伸ばしている。おいしさが口コミで評判を呼び、リピーターが増えている。市外から団体で訪れる客もいる。農産物への消費者の安全・安心への関心が高まる中、柳沼さんは「風評払拭(ふっしょく)には口コミが有効。今後も生産者の顔が見える直売に力を入れ、地道に安全・安心をアピールしていきたい」と話す。
(カテゴリー:震災から3年9カ月)