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福島をつくる(58) 第4部 六次産業化 福島大経済経営学類教授 小山良太氏に聞く

小山良太氏

<「地消地産」念頭に>
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの本県の復興を目指す上で、六次産業化(六次化)が果たす意義や成功に向けた課題などを、福島大経済経営学類教授の小山良太氏(41)に聞いた。
 原発事故という逆境を機に、六次化の取り組みを定着させる試みは重要だ。過去にはチェルノブイリ原発事故で被害を受けたウクライナやベラルーシでも小麦をウオツカ、果実をワインなどに加工する取り組みが盛んになった。原料をジュースやワイン、みそなどのように液体やペースト状に加工すれば、全体の濃度が均質化されるため、原料の放射性物質検査や商品のサンプル検査の手間は少なくなる。安全性への消費者からの信頼を得やすくなる。
 日本を含めた東アジアの農村部では、古くから多就業・合算所得で生計を立ててきた歴史がある。高知県馬路村の「ゆず」や広島県のレモンなど、全国各地の六次化の成功例を見ると、商品の多角化や技術力の高さ、安定的な供給力に裏打ちされている。県内ではそこまでの知名度を持つ商品はないが、福島市立子山の凍(し)み豆腐や伊達市のあんぽ柿など土地に根差した加工食の文化が息づいている。

 一方、現代社会における商品の消費サイクルは非常に短い。花畑牧場(北海道)の生キャラメルのように、社会的なブームを巻き起こしても、必ずしも安定した売れ行きが得られるとは限らない。そもそも食品は自動車などの集積型産業と違い、都道府県単位などの一定の市場規模があれば成り立つスモール・ビジネスに含まれる。県内には約200万人のマーケットがあり、食材の多くは県外の産地から流入しているのが実情だ。全国展開を狙って過大な投資をし、リスクを抱えるよりも、まずは「地消地産」を念頭に置いた商品作りを進めるべきだ。
 その意味では、六次化の対象には地域のニーズに合った商品が適している。「作ったから消費してくれ」ではなく、「消費者のニーズがあるから作る」という発想を持つことだ。県内の生協とJA、内池醸造が連携し、県内産大豆を用いた納豆や豆腐を製造・販売している「ふくしま大豆の会」は平成10年の設立以来、販売高を順調に伸ばしている。この拡大再生産が実現した理由は、大豆食品への県民のニーズの高さを踏まえ、地産地消で買い支えるシステムを築けたことが大きい。このように、地元の住民に消費されている食品に着目した上で、流通や加工の過程で付加価値を高め、地域により一層の利益を誘導する視点が重要だ。

 六次化が地域で担うべき役割は企業の論理である「利益の追求」ではなく、経済のグローバル化の中で、衰退が懸念される農村部でも永続的に暮らしが成り立つ仕組みを築くことにあるはずだ。グローバル化が進めば進むほど、その重要性は増すだろう。1年限りで100億円を売るよりも1億円の売り上げを100年間にわたり持続させることが大切だ。地域の産業を維持し、発展させるには消費者が地元の商品を選ぶ意識を持つことも大切になるだろう。
 =第4部「六次産業化」は終わります=

■略歴
 こやま りょうた 東京都出身。北海道大大学院農学研究科博士課程修了。「うつくしまふくしま未来支援センター」副センター長も務める。専門は農業経済学、地域政策論。農学博士。41歳。

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