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施設入所高齢者の避難リスク 被ばくリスク上回る 東大研究者ら調査

 東京電力福島第一原発事故に伴う高齢者施設の入所者避難は、事故直後に急ぐより、放射線被ばくがあっても受け入れ態勢が整うのを待った方がリスクが低いとする調査結果を東京大の研究者らがまとめた。研究者は避難の是非を議論する意図はなく、原発事故に対しては避難計画の整備などによって被ばくや避難のリスクに総合的に対応する必要があるとしている。
 東京大生産技術研究所特任講師(現・福島医大健康リスクコミュニケーション学講座准教授)の村上道夫氏、産業技術総合研究所安全科学研究部門主任研究員の小野恭子氏、東京大医学研究所医師・南相馬市立総合病院非常勤医師の坪倉正治氏らが論文をまとめ12日、インターネット上の学術誌「PLOS ONE」に発表した。
 調査の対象は福島第一原発から20~30キロ圏にある南相馬市の高齢者施設の入居者191人と職員184人の計375人。この高齢者施設と、避難しなかった施設(相馬市)の事故前後の生存率データに基づき、集団の平均としてどれくらい余命が縮むかを示す損失余命を計算し比較した。
 算出した損失余命は、原発事故当時に実際にあった迅速な避難の場合、375人の余命が計1万1000日短くなった。受け入れ先の準備が整った90日後を想定した避難の場合は27日だった。初期被ばくを避けて急いで避難した場合は、90日後にゆっくり避難した場合の約400倍も余命を損失する結果となった。

■研究者「事前に計画整備を」 施設の理事長「複数の対応策必要」

 研究結果について坪倉氏は、避難しなかった場合には、不安やストレス、薬・人材不足などのリスクも考えられ単純な比較はできないとする。その上で「原発事故に対応するには事前の細かな避難計画の整備や、物流の確保などによって、総合的にリスクを軽減することが重要と訴えたい」とした。
 調査対象となった南相馬市の施設を経営する南相馬福祉会の舟山正和理事長は「あの時は職員も食料もなく、原発もどうなるか分からなかった。再び同じ状況になっても避難せざるを得ないと感じる。原発に近い高齢者施設は入所者や職員の安全を確保するため、いくつもの対応策を用意しておかなければならないと思う」と話した。

カテゴリー:福島第一原発事故

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