いわき市平下大越のビニールハウスではイチゴの収穫が始まっている。生産者の舩尾隆相さん(37)は赤く実ったイチゴを手に取る。「大好きなこの味をもっと多くの人に届けたい」
舩尾さんは今年の10月に製造業から農家に転職した。東日本大震災の影響で実家の畑が津波をかぶり、生産量が半分以下になっていたという。9月にビニールハウスが完成し、以前の土耕栽培から高設ベンチ栽培に移行。新たな取り組みで分からないことが多くあることから、それまで生産を担ってきた母明美さん(61)と妻佳代子さん(35)の助けになろうと決心した。
いわきのイチゴは震災以降、生産量や耕作地、担い手の人数ともに減少傾向にある。舩尾さんは「地元産品の魅力を発信し、生産者の確保や風評払拭(ふっしょく)につながれば」と話す。
専業になってからまだ数カ月。知識や技術は母や妻にかなわないが、「形は違うがものづくりの仕事には変わりない。品質や生産量などより良いものを目指したい」と意気込んでいる。
(カテゴリー:福島第一原発事故)