政府は県やJAと連携し、県産農林水産物の風評対策を進める新組織を来年1月にも設ける。流通実態を調べ、取引量が東京電力福島第一原発事故前の水準に回復していない品目については、県内の農林水産物の検査態勢を説明した上で仕入れを増やすよう関係業界に要請する。高木陽介経済産業副大臣が24日、福島市で開かれた県原子力損害対策協議会で明らかにした。
新組織は内閣府や復興庁、農林水産省、経済産業省など関係省庁と県、JAで構成する。政府の原子力災害対策本部や復興庁の作業部会などとして位置付けることも検討する。
取り組みの詳細は今後詰めるが、品目ごとの他産地との価格差、原発事故前後の取扱量の推移を把握する。著しく流通量が減少している品目があれば、大手スーパーや外食産業などの業界団体に対し積極的に活用するよう求める。併せて、県内では県産農林水産物の安全確保に向けて厳密な検査が続けられている状況を伝えていく。
JAなどによると、県産農林水産物に対する風評は根強く、流通段階で依然として仕入れ控えや買いたたきの動きが見られているという。
新組織設置は20日に閣議決定した「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」に基づく対応。農水省は平成29年度当初予算案に総合的な風評払拭(ふっしょく)支援費として47億円を計上しており、新組織からの提言を事業に生かす。
内閣府原子力災害対策本部の現地対策本部長を務める高木副大臣は協議会で、「風評対策では被害実態の把握が極めて重要だ。農林業関係者の協力を得てしっかり対応する」と語った。
政府の取り組みに対し、県農林企画課は「流通段階の風評の実情を分析できれば、より効果的な対策が可能となる。県産農林水産物の品質や味に見合った価格の形成にもつなげたい」と期待している。JA福島五連は風評対策の強化を政府に求め続けており、実態把握に向け、可能な限り協力したいとしている。
(カテゴリー:福島第一原発事故)