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医の道、被災地で集大成 「帰還後押し」移住決意

新設される診療所前で決意を語る木村さん

 東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く浪江町の新たな町営診療所の所長に医師木村雄二さん(72)=東京都江東区出身=が就き、3月28日に診療を始める。長年へき地医療などに関わり、被災地の復興に役立ちたい-と手を挙げた。「町民の健康を守り、帰還を後押しできれば」と浪江を医療人生の集大成の地にする覚悟で臨む。

 木村さんは東京医科歯科大を卒業後、結核や肺がんの研究に取り組んだ。肺がんの発症や治療に関わる酵素についての研究などで成果を収めた。その後、ネパールで地元医師の育成に携わった。帰国後は岡山や宮崎、長崎各県の離島やへき地など医療過疎地域で診療に当たってきた。
 古希を迎え「これからは家内と温泉地で暮らそうか」と考えていたが、インターネットに公開された馬場有町長へのインタビューを聞いた。「帰る町民がいても、お医者さんがいなければ駄目なんです」。東日本大震災後、被災地のために何かできることはないかという思いがくすぶっていた。すぐに町に連絡した。
 気に掛かったのは妻の知珂子さん(75)のことだった。「原発事故で避難指示が続く地域に一緒に来てくれるだろうか」。決断を前に二人で町内を訪れた。除染廃棄物の入った袋が積まれた光景、人がいない街並み...。少ないながらも復興に向けて前向きに歩む町民の姿が目に焼き付いた。「人生の最後の仕事はここにしよう」。二人の気持ちは一致した。
 今年に入って浪江町に隣接する南相馬市に移り住み、今月から町役場内にある仮設の診療所で作業員らの診療に当たっている。いずれは町内に住み、住民の一人として生きていくつもりだ。
 町の居住制限、避難指示解除準備の両区域を解除する政府方針は3月31日。帰還した町民の健康を支えるのは自分だという使命感が次第に大きくなっている。「この場所に来たのは運命。できることを全力でやる」。体力も気力もみなぎっている。

カテゴリー:福島第一原発事故

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