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「避難区域」帰還に向け拠点整備 地元意向尊重求める 県、拠点整備巡り国に

 帰還困難区域内の復興拠点整備を巡っては、町村が求める拠点の範囲や箇所数、位置付けが異なる。県は国に対し、自治体が整備計画を策定する段階から最大限支援し柔軟に対応するよう求めている。ただ、現時点で拠点の認定基準は示されておらず、市町村の考えがどこまで反映されるか不透明さも抱えている。


■大熊町 町役場30年度完成目標 大川原地区に居住受け皿

 大熊町は住民帰還の受け皿として第1次復興拠点に位置付けている同町大川原地区(居住制限区域)の都市計画をまとめ、県の復興整備協議会の承認を受けた。町役場を平成30年度に完成させる目標などが盛り込まれており、29年度の早い時期に事業に着手する。

 都市計画の対象は常磐自動車道西側の約18・2ヘクタールで、用途は【地図】の通り。まず町役場新庁舎を現在の町役場大川原連絡事務所がある場所に建設する予定で、整備関連事業費を町の平成29年度当初予算案に計上する。

 帰還を望む傾向が特に高齢者に強いため、町営公営住宅50戸、町立診療所やデイケアサービスなど福祉施設の整備を検討している。商業施設を誘致し、企業や研究施設向けの用地も確保する。

 町は常磐自動車道東側の約20ヘクタールについても用地を取得し、計画枠を広げる方針。

 大川原地区の北側には、町が出資する大熊エネルギー合同会社の大規模太陽光発電所の整備が進む。約16ヘクタールを活用し7月に完成する予定。西側には廃炉作業を担う東京電力グループ会社の新事務所が建設されている。

 一方、町は国の先行除染が進む帰還困難区域の下野上地区について区域見直しを政府などに要望している。新たに、JR大野駅周辺を拠点にした復興計画立案を環境省と調整している。


■双葉町 JR双葉駅周辺 34、35年目安に住環境

 全面積の96%が帰還困難区域となっている双葉町は「第2次復興まちづくり計画」を策定し、今後5〜10年間で取り組む施策を示した。平成34、35年を目安に、同区域内のJR双葉駅周辺に居住可能な環境を整えるとしている。

 駅西側の約40ヘクタールを「新市街地ゾーン」と位置付けて特定復興拠点を設定し、国の認定を受けて居住環境を整える考えだ。現地では昨年10月から除染が始まり、年内の完了を目指している。宅地を造成して住宅を整備するほか、住民の交流施設を置き、医療・福祉施設や商業施設、宿泊施設を誘致する。10年後の居住目標人数を2千〜3千人とした。

 沿岸部北側の避難指示解除準備区域では除染が完了した。新たな産業と雇用の場として「中野地区復興産業拠点」整備に向けた準備が進んでいる。2月に都市計画説明会を終え、計画案の縦覧が始まった。4月に地権者説明会を開催する予定。企業の受け入れに向け、30年度には道路や下水道を整備する。廃炉関係の企業などに進出を呼び掛けている。

 復興産業拠点には、県が32年夏までにアーカイブ施設を整備する。防潮堤の工事も進んでおり、30年度に完成予定。

 一方、町が町外拠点として整備を決めた災害公営住宅の建設用地造成がいわき市勿来町で進んでいる。町民向けとしては最大規模となる180戸分を設け、医療・福祉、商業施設を併設する。入居開始予定は29年度後半を見込んでいる。

 
■浪江町

 帰還困難区域が面積の約8割を占める。風土や文化も多様であるため、復興拠点は1カ所ではなく、旧町村単位の津島、大堀、苅野の地区に整備するよう国に求めている。

 1月末時点の人口は1万8464人で、帰還困難区域内は17%の3137人。


■富岡町

 特定復興拠点の場所を決めていないが、帰還困難区域の復興に関する方向性を平成28年度内に示す方針だ。

 同区域にはJR常磐線の夜ノ森駅や夜の森公園などがあり、周辺には住宅地が広がっている。このため、町の担当者は「拠点の線引きが難しい」としている。

 2月1日時点の人口は1万3560人。このうち帰還困難区域は3982人で全体の30%となっている。


■葛尾村

 野行地区の野行公民館を中心とした復興拠点の整備計画を策定する方向で調整している。

 国は整備計画を認定後、拠点区域で除染や生活環境の整備を進めるとしており、村は「詳細については今後検討する」としている。

 2月1日現在の人口は1475人で、帰還困難区域内は8%に当たる116人。


■飯舘村

 3月末に避難指示が解除される居住制限区域の深谷行政区に道の駅などを整備する。20行政区で唯一、帰還困難区域となっている長泥行政区には小規模な復興拠点を設け、その周辺に限った除染とインフラ整備を進める案を住民に示した。

 一方、住民側は区内全体の除染を村に求める姿勢を崩しておらず、協議は平行線をたどっている。

 1月末現在の人口は6122人で、帰還困難区域内は4%の263人。


■政府、まちづくり支援
 政府は帰還困難区域内に整備する特定復興再生拠点(復興拠点)を中心に、新たなまちづくりを支援する。道路や水道など社会基盤の整備と除染を国費で一体的に進めるとしている。

 政府は2月10日、復興拠点の整備を盛り込んだ福島復興再生特別措置法改正案を閣議決定した。復興拠点の設定に向けては、その範囲や生活基盤整備の手法などをまとめた計画を市町村長が作成・申請し、内閣総理大臣が認定する。整備計画の認定から5年後をめどに避難指示を解除する考えで、単一市町村内に複数の拠点を設置することも認める。

 認定基準として(1)除染で空間放射線量がおおむね5年以内に年間20ミリシーベルト以下に低減する(2)計画的かつ効率的な公共施設等の整備が可能な規模かどうか(3)住民帰還や事業活動によって、想定した土地利用が実現する見込みがあるか−などを想定している。政府は開会中の今国会で改正福島復興再生特別措置法が成立後、拠点の認定基準などを福島復興再生基本方針に盛り込む。市町村長から申請される整備計画の認定手続きにかかる時間を考慮すると、拠点着工は早くとも9月以降になる見通し。

 除染はこれまで東電の費用負担が原則だった。しかし、廃炉や賠償などの事故対応費用が想定を上回る見通しとなったため、政府は東電が資金不足に陥り除染が滞る事態を回避しようと国費投入を決めた。ただ、事実上の東電救済に当たるとの批判もあり、今後の国会審議が注目される。

■復興庁福島復興局長 木幡浩氏に聞く 子育て環境充実重要

 今春に川俣、富岡、浪江、飯舘の4町村で避難指示が解除される。住民帰還と地域再生をいかに後押しするのか。復旧・復興の司令塔である復興庁の木幡浩福島復興局長(56)に考えを聞いた。

 −住民帰還が始まる。4町村の課題は何か。

 「共通した課題の一つは安全・安心の向上だ。フォローアップ除染などで空間放射線量をさらに下げ、除染廃棄物を目立つところから中間貯蔵施設に搬入しなければならない。防犯対策や有害鳥獣駆除なども大事になる。2つ目は利便性の向上で、小売店や飲食店、生活用品店、医療福祉施設などの選択の幅を広げたい。3つ目は生業の再生と新産業の創出だが、環境が大きく変わった中で商売や農業を再開するのは大変だ。単に元に戻すだけでなく、将来を見越して先進的な経営や作物転換を進めなければならない」

 −国として町村をどう支援するか。

 「福島スペシャルとしての福島再生加速化交付金や福島生活環境整備・帰還再生加速事業などで対応する。同事業は街灯の整備や防犯パトロール、保育園などの修繕、農業用水路の清掃などに幅広く活用できる。現場の事情に応じて柔軟に対応するが、もしも既存の制度に当てはまらないのであれば新たな制度も検討する。平成28年度に着手した道路側溝の堆積物除去は、柔軟に運用した一例だ」

 −時間の経過とともに帰還をためらう住民も出ている。

 「大事なのは国や県、市町村が古里の先行きが見えるようにすること。人が動けば復興は進む。少しずつでも実績を上げれば『こんなに変わってきたんだ、それならば戻りたい』と意識が変わってくる」

 −若い世代が帰還できる環境の整備も求められている。

 「子どもたちが戻る、転入してくる教育などの環境の充実が非常に重要だ。避難区域だった南相馬市小高区の小中高校は4月に再開し、700人以上が通う。下校後の子どもたちが気軽に立ち寄れる店が戻れば地域の雰囲気は大きく変わる。戻る住民だけでなく、新たに移住してくる人も活力になる」

 −避難先への定住を決めた住民もいる。避難元と避難先の「二重の住民票」は可能か。

 「二重の選挙権、被選挙権、課税などの問題があり制度化は困難だろう。定住先の一員として税負担をして住民サービスを受け、地域社会を一緒に築いていくのが原則。一方で、私も飯舘村出身だけに古里とのつながりを保ちたいという気持ちはある。例えば市町村が条例で『ふるさと住民票』のような制度を作り、古里のサービスを得られるようにすれば、つながりはずっと保てると考える」

 こはた・ひろし 飯舘村出身。原町高、東京大経済学部卒。昭和59年に自治省(現総務省)入省。総務省公営企業課長、岡山県副知事、消防大学校長などを歴任。平成28年6月30日付で福島復興局長に就いた。56歳。

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