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運営すれば赤字 国の支援 具体策なし 福祉再開(上)

再開の見通しが立っていない特別養護老人ホーム「梅の香」

 東京電力福島第一原発事故による避難指示が昨年7月に解除され、住民の帰還が始まっている南相馬市小高区。平成29年2月末現在で帰還した住民1249人のうち、65歳以上の高齢者は679人と54・4%を占める。東日本大震災前の27・9%から2倍近く割合が増した。
 震災前、小高区に介護福祉関連事業所は11施設あったが、現在は市社会福祉協議会の運営するデイサービスセンターしか再開していない。高齢世帯からは「いざというときに世話になれる入所施設が欲しい」との声が聞こえる。
 「帰還者の要望に何とか応えたいが、志だけでは運営できない」。南相馬市内で介護福祉施設を営む社会福祉法人南相馬福祉会の常務理事を務める大内敏文(60)は悔しさを隠さない。運営資金が足りず、小高区にある特別養護老人ホーム「梅の香」の再開のめどが立たない。

 震災前、梅の香の入所者定数は60床で、介護職員、看護職員、生活相談員を含めて46人の職員が勤務していた。当時から働き手の確保は課題だったが、他業種と同様に震災と原発事故後は人手不足が深刻化している。再建するなら確保が見込める職員数から20床での運営が限度とみる。
 特別養護老人ホームの収支は、60床で運営する場合、入所者の割合(入所率)が90%を超えないと利益が出ないとされる。20床の場合、入所率が100%でも入所者の人数が少ないため利益が出ず、利用料収入から人件費と光熱費などを差し引けば年間4000万~5000万円の赤字となる計算だ。給食業者や保守契約会社も確保し経費を支払う必要がある。
 「運営の補助は受けられないのか」。大内は小高区に視察に訪れる厚生労働省の幹部らに実情を説明し、何度も補助の制度化を要望した。しかし、いずれも「他の自治体の状況も含めて検討する」との回答にとどまった。制度化について厚労省は「具体的には何も決まっていない」(高齢者支援課)としている。

 南相馬福祉会に寄せられている特別養護老人ホームの入所希望は500人近い。大内は一日も早く地域の要望に応えたいと思いつつ、避難指示の解除から間もなく8カ月が過ぎる。
 施設の改修や備品の更新は国などの補助で済ませた。建物はすぐにでも使える状態にある。ただ、再開すれば行き詰まるのは目に見えている。
 大内が望むのは経営が軌道に乗るまでの新たな補助制度だ。「避難区域の福祉事業はどこも同じ課題を抱えている」(敬称略)

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