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「中間貯蔵施設・環境再生」仮置き場確保 課題 除染 国直轄は月内完了

 帰還困難区域を除く避難区域の宅地、農地、森林、道路を対象とした国直轄除染は平成28年度内に11市町村全てで作業が終わる見通しとなった。

 国直轄除染の実施率は【表(1)】の通り。1月末現在、田村、楢葉、川内、大熊、葛尾、川俣、双葉、飯舘、富岡の9市町村で既に完了した。

 残る南相馬市は宅地96%、農地94%、森林92%、道路94%。浪江町は宅地95%、農地95%、森林99・8%、道路91%で、いずれも90%を上回っている。

 福島環境再生事務所によると、作業は順調に進んでおり、3月末には除染を終える見通しだとしている。

 ただ、実施率には地権者から除染の同意が得られていない箇所は含まれていない。同省は除染終了後でも同意が得られるなどした箇所については引き続き除染を実施する。


■仮置き場確保 課題 今年度終了目標の市町村除染 12市町村 新年度継続

 平成28年度に終了を目指すとして国の財源で行われてきた市町村除染は、実施計画を策定した36市町村のうち、12市町村が達成できないことが福島民報社の調べで分かった。各市町村は除染廃棄物の仮置き場の確保が難航したことや天候の影響で作業を中断せざるを得なかったことなどを原因に挙げている。

 28年度内の完了が難しいのは福島、郡山、いわき、伊達、二本松、白河、本宮、国見、川俣、大玉、広野、川内の各市町村。三春町と相馬市は2月末までに除染作業が終了した。須賀川、南相馬、鏡石、天栄、西郷、中島、棚倉の各市町村は3月末までに終わる見通しだ。

 28年度内の完了が難しい市町村のうち福島市は公共施設、道路、農地、森林の各除染が29年度も続く見通しで、担当者は「特に道路除染は仮置き場が確保できなければ発注できず、想定よりも工程がずれ込んだ」としている。

 白河市の担当者は「住民から除染実施の同意を得るのに時間がかかった」と説明。二本松市の担当者は「中間貯蔵施設の整備が進まず、仮置き場から(廃棄物を)搬出できないため除染が進まない」と語った。

 本宮市などは積雪や大雨、台風などの影響で道路除染を中心に作業を中断せざるを得なかったとしている。


■仮置き場確保 課題 撤去作業始まる 除染基準下回る側溝土砂 福島市先行、今後各地で

 東京電力福島第一原発事故で除染基準を下回る土砂が道路側溝に堆積している問題で、福島、いわき両市と県は平成28年度内に土砂の撤去に取り組む。県内では計18市町村が除去する意向を示しており、今後各地で作業が本格化することになる。

 国の福島再生加速化交付金を活用して実施する。福島市は2月から佐倉小の市道通学路の撤去を既に開始しており、平成28年度内に西信中、荒井小、佐原小の周辺でも撤去を完了させる方針。

 いわき市はモデル事業として小名浜地区の市道で取り除く方針で、近く開始する。このほか、西郷村は28年度内に側溝の堆積物の状況を調査する。他の市町村も29年度以降に取り組む方針。

 県は、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染実施計画を策定した36市町村にある県管理の国道や県道を対象に、市町村の実施地域と並行して取り組む計画だ。28年度はいわき市のモデル事業の開始を待って作業を始める予定。

 放射性物質濃度が一キロ当たり8000ベクレル以下の堆積物は、市町村が一般の産業廃棄物処分場を確保して処理する。8000ベクレル超の堆積物は富岡町の特定廃棄物埋立処分施設(旧フクシマエコテッククリーンセンター)か、中間貯蔵施設に運ぶことにしている。

 ただ、処分先の確保には業者や周辺住民の理解が得られるかが鍵になる。


■中間貯蔵 施設運用 秋に開始 廃棄物搬入 本格化へ 学校保管を優先的に

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設は、用地交渉が進み始め、昨年秋には大熊、双葉両町で本体工事に着手した。今秋には土壌貯蔵施設の運用が始まる。一方、今年3月までの完了を目指していた国直轄除染は帰還困難区域を除き目標達成が確実となった。ただ、市町村除染は仮置き場の確保が難航するなどし、一部市町村は平成29年度にずれ込む見通しだ。

 建設が進められているのは、搬入された除染廃棄物の重量や放射線量などを測定し、可燃物と土壌などに分ける「受け入れ・分別施設」と、廃棄物を長期間保管する「土壌貯蔵施設」。大熊町では受け入れ・分別施設を小入野地区、土壌貯蔵施設を小入野地区と夫沢地区にまたがった場所に整備している。双葉町では受け入れ・分別施設、土壌貯蔵施設とも郡山地区に設ける。

 受け入れ・分別施設は両町とも今春ごろから試運転を開始する予定だ。

 平成28年度は2月27日時点で16万1968立方メートルを大熊、双葉両町の保管場に運び込んだ。29年度は土壌貯蔵施設の運用開始に伴い、50万立方メートル程度に増やせるとみている。県内の学校に保管されている除染廃棄物を優先的に運び入れる。

 環境省は今後も用地取得の進捗(しんちょく)をみながら土壌貯蔵施設などの施設を順次増やす。平成30年度に計画している90万〜180万立方メートル程度の搬入に対応するため受け入れ・分別施設や土壌貯蔵施設を増設、拡張する。

 昨年9月に着工した大熊町の仮設焼却施設は今冬ごろに稼働する予定。29年度は双葉町にも減容化施設を着工し、31年度の稼働を目指す。

 また、除染で発生した草木などの焼却灰の輸送に向けた保管場を確保しながら、31年度の稼働を目指して廃棄物貯蔵施設の整備に着手する。

 計画が順調に進めば、31年度で累計300万〜650万立方メートル程度、32年度で500万〜1250万立方メートル程度の搬入が可能となる見通しだ。


■用地取得率21% 2月末現在

 環境省によると、今年2月末現在(速報値)、地権者2360人のうち土地の売却や地上権の設定に合意したのは719人。契約済み面積は約336ヘクタールで建設予定地約1600ヘクタールの約21・0%となり、同省が累計140〜370ヘクタール程度とした平成28年度の用地取得目標を達成した。担当者は「施設整備への住民理解が進んだ」としている。

 1年ほど前の契約者は約40人にとどまっていた。県は「中間貯蔵施設の整備は本県復興に必要不可欠」と判断。用地交渉を加速させるため昨春、環境省に職員を派遣した。昨年5月に大熊町、8月には双葉町が国に要請された町有地提供を了承する方針を示し、7月ごろから契約件数が飛躍的に伸びた。

 環境省は用地取得の目標を29年度で累計287〜830ヘクタール程度、30年度で同400〜940ヘクタール程度、31年度で同520〜1040ヘクタール程度に設定している。政府の「復興・創生期間」の最終年度で、東京五輪・パラリンピックが開催される32年度は同640〜1150ヘクタール程度としたい考えだ。

 これらの目標を達成することで、住宅や学校などの身近な場所や、幹線道路沿いに現場保管している除染土壌の本格的な搬入開始を目指す。

 環境省の担当者は「地権者の皆さんには非常に協力的に対応していただいている。月40ヘクタールのペースで取得面積が増えており、用地確保は軌道に乗ったと受け止めている。今後も確実に取り組みを進めていきたい」としている。


■大熊と双葉 町有地提供

 中間貯蔵施設の整備を巡っては予定地内の大熊、双葉両町の町有地提供の動きに注目が集まっている。

 施設整備に向け、大熊町は全町有地約95ヘクタールのうち、学校や神社、一部の墓地などは町民の強い要望から現状のまま残す方針。それ以外の土地について「賃貸」か「売却」のいずれにするか提供方法を検討している。昨年秋に提供方針を決める予定だったが、町民の声を聞くため決定時期を延ばして調整している。

 県内の学校に保管されている除染廃棄物の保管場としては、大熊町が昨年5月、双葉町が同8月に施設建設予定地内の町有地提供を了承。大熊町はスポーツ施設「ふれあいパークおおくま」(面積約15ヘクタール)とした。施設が整備できない道路なども含めて町有地が115ヘクタールある双葉町は昨年9月、環境省と協議し、対象の土地を双葉総合公園(面積約22・5ヘクタール)に決めた。現在も県内各地から搬入が進んでいる。


■環境省福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長 土居健太郎氏に聞く 輸送の安全確保に努力

 県内復興の大前提となる環境再生に向け、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の整備が本格化している。環境省福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長の土居健太郎氏(51)に、整備の現状や見通しなどを聞いた。

 −昨年11月、施設の本体工事が始まった。

 「本来の構想では3年で施設を建設し、除染廃棄物を持ち込むと県民に説明していた。やっと着工できたとの思いだ」

 −用地交渉が進んでいる。

 「施設の工事が始められた背景にも、用地交渉の進捗(しんちょく)がある。これまでは地権者に提示する補償額の算定に時間がかかり、交渉までうまくたどり着かなかった。昨夏、ようやく結果がそろい、地権者との話し合いができるようになった。省内の態勢拡充のほか、用地交渉の経験者や県職員の協力を得られたのも大きい」

 −用地交渉の見通しを教えてほしい。

 「今後は相続問題を含んだ複雑な交渉にも精力的に取り組まなければならない。1月末時点で9割以上の地権者の連絡先を把握しているが、約390人は亡くなっていて遺族の連絡先が分からない。相続が百人や千人規模に及ぶ可能性も考えられるため、対応方法を考えなければならない。新たな態勢の在り方を検討する必要がある」

 −今秋には除染廃棄物の本格的な受け入れが始まる。課題は何か。

 「除染廃棄物の安全な輸送と施設の適切な運用だ。避難指示の解除が進めば、住民の皆さんが生活する場の中を輸送することになる。通勤・通学の時間帯を避ける、地域行事などが行われる際に輸送できるかなど、きめ細かく対応しなければならない。自治体や住民の声を聞き、調整したい。車両の混雑も解消しなければならない」

 −施設の安全管理も重要になるのではないか。

 「これまでに廃棄物の仮設焼却炉などを運用してきたが、中間貯蔵施設でも類似した作業が多い。実績を生かせるはずだ。本格受け入れまでにさらに作業の精度を高めていきたい」

 −環境省は昨年3月、東京五輪・パラリンピックが開かれる平成32年度末まで5年間の施設整備の見通しを示した。

 「震災後、当初3年としていた計画が遅れた分、計画に示したスケジュールは必ず達成しなければならない。細心の注意を払いながら、確実に業務を進める」

■略歴
 どい・けんたろう 札幌市出身。北海道大大学院衛生工学修士課程修了。平成2年に厚生省(現厚生労働省)入省。環境省低炭素社会推進室長、同省地球温暖化対策課長などを歴任し、27年10月から同省福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長。51歳。


■原発事故後上昇の放射線量 各地で減少傾向続く

 県は東京電力福島第一原発事故後、県内の空間放射線量を把握するため、県内7地点でモニタリング調査を実施している。県内各地で除染が進んだほか、自然減衰、風雨による放射性物質の移動などにより、県内の放射線量は大きく下がった。

 原発事故直後の平成23年4月、福島市は毎時2・74マイクロシーベルト、郡山市は同2・52マイクロシーベルトとなり、原発事故前の平常時の40〜60倍程度となった。会津若松市は同0・24マイクロシーベルト、いわき市は同0・66マイクロシーベルトにまで上昇した。

 約半年後の同年9月には福島市が同1・04マイクロシーベルト、郡山市が同0・93マイクロシーベルトと2分の1以下に下がった。その後も放射線量は年々下がり、3月1日現在、福島市は同0・17マイクロシーベルト、郡山市は同0・10マイクロシーベルト、会津若松市は0・05マイクロシーベルト、いわき市は0・07マイクロシーベルトとなっている。

 県放射線監視室は県内の放射線量の推移について「放射性物質の半減期に加え、除染や土壌の遮蔽(しゃへい)効果などで多くの地域は原発事故前の値に戻りつつある」と分析。ただ、帰還困難区域など福島第一原発近辺については除染が進んでいないため高線量状態が続いており、「原発事故前の線量の水準に戻るまでにはまだ相当の時間がかかるだろう」とみている。

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