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「健康管理」5月にも詳細分析 甲状腺検査2巡目 放射線とがん 1巡目判断「影響考えにくい」

 東京電力福島第一原発事故に伴い、県と福島医大が実施している県民健康調査の甲状腺検査は2巡目の結果がほぼまとまり、5月にも詳細な分析が始まる。専門家でつくる検討委員会は、1巡目の検査で発見されたがんについて「放射線の影響とは考えにくい」との判断を示しており、2巡目の評価結果が注目される。一方、福島医大には県民の健康を守るため高水準の設備を備えた施設が完成し、がん治療薬開発などに向けた新たな研究が始まった。


 県民健康調査の甲状腺検査の2巡目は平成26、27両年度に行った。昨年12月末までに甲状腺がんが確定したのは1巡目(平成23〜25年度実施)、2巡目合わせて145人となった。医師や放射線の研究者らで構成する検討委はこれまでの検査結果を踏まえ、放射線と甲状腺がんの因果関係などを改めて調べる評価部会を5月にも開く方針だ。

 がんと確定したのは1巡目が101人、2巡目が44人だった。がんの疑いは1巡目が14人、2巡目が25人となった。

 2巡目でがん、がんの疑いがあると診断された69人が受診者全体に占める割合は0・03%。男性31人、女性38人だった。原発事故後4カ月間の被ばく線量が推計できたのは36人で最大は2・1ミリシーベルト、15人が1ミリシーベルト未満だった。

 評価部会では、1巡目と2巡目を合わせて分析し、がんやがんの疑いと診断された人の被ばく線量や年齢、性別などを詳しく調べる。有識者から「チェルノブイリ原発事故が影響したがんの潜伏期間は5年だった」という意見が出ており、2巡目以降の検査結果の分析が重要になるとの指摘もある。1巡目の検査結果を分析した検討委は「放射線の影響とは考えにくい」とする中間報告を取りまとめている。

 29年度に検査を予定していた人も含め、8万7217人が受診した。このうち、しこりなどが確認されたのは483人で2次検査の対象となった。143人が既に2次検査を受け、詳細な結果は今後出る予定。


 ■受診率の低下続く 県民健康調査(甲状腺検査、健康診査) 体制の再構築 急務

 県民健康調査(詳細調査)の平成27年度分の受診率がまとまった。甲状腺検査、健康診査とも4年連続で前年度を下回った。県と福島医大は避難生活の長期化で新たに体調を崩す人もいるとみて、受診を呼び掛けている。

 震災、原発事故発生時、18歳以下だった県民を対象に市町村持ち回りで実施している甲状腺検査(27年度の対象・16万4406人)の受診率は67・7%となり、前年度を5・7ポイント下回った。

 避難者などを対象に採血などで病気の有無を調べる「健康診査」は16歳以上(同19万19人)が21・7%で0・5ポイント、15歳以下(同2万5296人)が30・1%で5・5ポイント低下した。

 県県民健康調査課は受診率の低下が続く理由を、検査を受ける医療機関が市部に集中しているためと説明している。対象者が引っ越しや進学、就職などで中山間地などに移り、近くに協力する医療機関がない場合には交通費が負担になるケースがあるという。甲状腺検査の場合、今後、成人して県外に移り住む対象者がさらに増えるとみられ、検査を受けやすくする体制整備が急務となっている。

 震災から6年が経過し、健康指標は若い世代を中心に改善傾向にあるが、27年度健康診査では高齢者の尿酸値などの数値が悪化した。県は避難者からの健康相談を受け付ける体制を強化する。


 ■甲状腺検査 現状まま継続 検討委で大勢 再検討意見、拡充要望も

 甲状腺検査の今後の在り方を巡っては、昨年9月の検討委の会合で「現在の規模を維持して継続すべき」との意見が大勢を占めた。一方、医療関係者や民間団体からは再検討を求める意見と拡充を要望する意見の両論が出ており、今後の対応が注目される。

 昨年9月の会合ではチェルノブイリ原発事故の場合、甲状腺がんと診断された子どもが事故発生から5年以降に増えた点などについて議論した。「少なくとも検査を10年間は縮小すべきではない」「検査のデータ蓄積が中途半端になり、信頼度が低下するのは避けなければならない」とする意見が目立った。

 県小児科医会は昨年8月、甲状腺検査についての再検討を県に要望した。がんまたはがんの疑いとされた子どもがいたことを挙げ、県民の不安解消に向け分かりやすく説明し、検査を受けないという選択も認めるよう求めた。一方、甲状腺がんと診断された患者の家族でつくる「3・11甲状腺がん家族の会」は同月、検査の対象年齢の拡大や受診しやすい環境整備などを県に要望した。

 検討委は昨年12月、放射線の甲状腺への影響などを調べる独立した専門家会合の設置を県に提案した。検討委とは別の立場で、県民の不安解消のため議論してもらうのが狙い。県が国などと対応を協議している。


 ■福島医大放射線医学 県民健康管理センター長 神谷研二氏に聞く 調査で県民の不安解消

 県民健康調査の事務局を担う福島医大放射線医学県民健康管理センターの神谷研二センター長(66)に、県民の健康管理の在り方を聞いた。

 −震災、原発事故から6年がたつ。県民の健康状態をどう分析しているか。

 「震災、原発事故後に悪化した県民の健康指標は時間の経過とともに回復傾向にある。ただ、震災前の状態には完全に戻っていない。特に高齢者の回復が遅く、体重が増加しつつある。避難生活が長くなると体調の悪化が進むおそれがあり、そうした人のケアが重要になるだろう。震災前から県内で多かった高血圧や心筋梗塞などへの対処も必要だ」
 
 −県民健康調査はどのような役割を果たすのか。

 「県民の健康状態の把握を続け、結果を示し続けるのが重要だ。これまでの調査でも科学的知見を積み重ね、県民の不安解消につなげてきた。例えば、多くの県民の外部被ばく線量推計値はチェルノブイリ原発事故に比べて高くなかったことが証明された。健康への不安を抱える県民が安心できる材料を提供したい。医師に相談したり、健康増進教室に行ったりする手助けもしたい」
 
 −県民健康調査の受診率・回答率が低下傾向にある。

 「時間がたつにつれ、健康への関心が薄れているが、受診を強制できない。住民の希望に添った調査ができる環境を整えたい。県外でも受診ができる医療施設を増やす。郵送だけでなく、インターネットでも回答できるようにするなど対策を進めていきたい。調査で全体的な傾向が把握できれば、具体的な健康改善の対策を立てられる。県民の皆さんにできる限り受診してほしい」
 
 −県、福島医大が連携して今後はどういった取り組みに力を入れるのか。

 「甲状腺検査を受けた子どもの不安解消が課題だ。科学的根拠に基づいて議論をするため、世界中の知見を取り入れたい。県民が安心できるよう踏み込んだ答えを出すとともに、受診する人とコミュニケーションをしっかり取りたい。一方、健康状態は改善しているが、県民健康調査の健康診査に来る住民は限られている。普段外出せず、受診しない人たちの健康が悪化している可能性がある。病気予防への助言などができるよう体制づくりを進めたい」

■略歴
 かみや・けんじ 岡山県真庭市出身。広島大医学部卒。同大の緊急被ばく医療推進センター長などを務めた。平成23年4月から県の放射線健康リスク管理アドバイザー、同年7月から福島医大副学長を務めている。専門は放射線医学。66歳。

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