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【震災から7年】「農林水産業再生」 漁業 本格操業へ試み継続 試験操業漁獲 前年比56%増

 2012(平成24)年から本県沖の沿岸部で行われている漁の試験操業。開始から5年9カ月が経過し、本格操業の再開を目指す漁業者の努力が続いている。

 試験操業の漁獲量は毎年増え続け、県の統計では2017年(速報値)は前年比56%増の約3286トンとなった【表】。対象魚種は昨年4月から「出荷制限魚種を除く全ての魚介類」となり、いわき地区の試験操業検討委員会では171種、相馬双葉地区の同検討委では175種を漁獲対象にしている。両検討委ではさらなる漁獲量拡大に向けた操業日数の増加も検討している。

 操業海域の拡大も進み、自粛していた福島第一原発から半径10~20キロ圏を含む海域では昨年からコウナゴなどの試験操業が始まった。今年2月には相馬市松川浦の青ノリ出荷が約7年ぶりに再開。県と県漁連は県産魚介類のPRに向け、資源管理に配慮して漁獲した水産物に与えられる水産エコラベルの認証取得を目指し協議を継続している。

 水産関連施設の整備も進む。相馬市と新地町にまたがる工業団地では県水産種苗研究・生産施設、同町の釣師浜漁港には荷さばき施設が建設されている。いわき市小名浜では放射能研究棟などを備えた県水産試験場の新庁舎が建設される。

 本格操業再開へと歩む一方で、10種の魚介類についてはいまだ出荷制限が続く。漁獲量が少なく検体の確保が困難な現状にあるが、県などがモニタリング検査実施に向けた努力を続けている。


■林業 素材生産量回復基調に

 県内林業は徐々に明るい兆しが出ている。素材生産量は回復基調にあり、栽培キノコの生産量も年々増えている。野生キノコは一部の地域・品目で原発事故後初めて出荷制限が解除された。

 農林水産省の木材需給報告書によると、県内の素材生産量(製材用・合板用・チップ用の合計)は2011(平成23)年は63万6千立方メートルだったのに対し、2013年は69万5千立方メートル、2015年は74万立方メートルとなっている。

 栽培キノコの生産量の推移は、2012年は3453トンで原発事故前年の半数まで減ったが、徐々に生産が拡大し、2016年は4912トンとなった。品目は菌床のシイタケやナメコが中心となっている。

 昨年秋には、白河市と西会津町のキノコ農家が県独自の農産物安全認証「ふくしま県GAP(FGAP)」を取得した。

 西会津町の野生ナメコと会津美里町の野生ムキタケ計2品目は昨年4月、野生のキノコや山菜で初めて出荷制限が解除された。放射性物質モニタリング検査で2年続けて国の基準値を下回り、60検体程度を調べる詳細検査でも全て基準値より低くなり、政府の解除要件を満たした。


■GAP取得の動き活発化

 県やJAは農産物の安全認証制度「GAP」の取得拡大に県を挙げて取り組んでいる。認証取得に向けた動きは活発化しており、県内の取得数は2017(平成29)年度内に66件に増える見通しだ。

 内堀雅雄知事と大橋信夫JA福島中央会長は昨年5月、2020年度までに都道府県別のGAP取得数で日本一を目指すとする「ふくしま。GAPチャレンジ宣言」を発表した。県はGAP認証の取得や更新に関わる費用を全面的に補助しており、昨年7月には県独自の認証制度「ふくしま県GAP(FGAP)」を創設した。JAは職員の指導力向上に力を入れ、生産者の認証取得を支援している。

 生産者の取得意欲をさらに高めるには、消費者や流通関係者のGAPに対する認知度向上が鍵となる。県は国や市町村と連携し、消費者や流通関係者にGAPの意義の重要性を発信していく方針だ。

 GAPは農家が食品の安全性や環境保全をはじめ労働の安全などを考慮して営農していることを民間団体や都道府県など第三者が客観的に認証する制度。農家は生産のさまざまな工程を詳細に記録し、審査に合格すると認証を得られる。


■県産品のネット販売が好調

 アマゾン、楽天、ヤフーのインターネット通販大手3社と連携した県のオンラインストア事業が好調だ。売上総額は今年度目標の6億円を上回り13億円を超えた。特にコメが好調という。


■県漁連会長 野崎哲氏に聞く 漁業販路拡大が課題

 県漁連の野崎哲会長に復興状況や今後の抱負と課題などを聞いた。

 -試験操業の現状と課題は。

 「当初は三種だった対象魚種が約170種に増え、昨年からは魚市場での入札も再開された。漁業者が水揚げ増に努力しており、今後は販売先の確保が大きな課題となる。福島第一原発から10キロ圏内の海域は操業を自粛しており、厳格なモニタリング検査の継続も必要だ」

 -流通拡大へ対策は。

 「県漁連は首都圏などで県産水産物のPRイベントを展開しているほか、2020年東京五輪・パラリンピックの食材への採用を目指し水産エコラベルの認証取得にも取り組んでいる。これからも国や県と連携し、漁業者、買い人、小売店など流通に関わる業者全体を支える施策を推進したい」

 -サンマやカツオなど沖合漁業の現状は。

 「昨年はサンマが記録的不漁となり、いわき市の大手仲買業者が破産申請するなど先行きに懸念が広がっている。沖合漁業は沿岸漁業とともに福島の水産業を支える大切な漁業。行政には救済措置などを早急に検討してほしい」

 -福島第一原発に貯蔵されているトリチウム水の処理方法について議論が続いている。

 「トリチウム水の海洋放出は魚介類の風評拡大につながりかねず、反対の姿勢に変わりはない。海洋放出を除く手段での処分を前提に、安全かつ迅速に廃炉作業が進行することを期待している」

 -試験操業が長引き、漁師の減少が心配される。

 「若い人が安心して漁業を続けるためには本県水産業の基盤自体を強めなければならない。そのためにも今年10月の合併を目標に協議を進めている『一県一漁協』の実現に全力を注ぎ、事業合理化を図っていきたい」

 のざき・てつ いわき市小名浜出身。1978(昭和53)年に青山学院大を中退して家業の酢屋商店に入社し現在、5代目社長。2010(平成22)年に県漁連会長に就任した。小名浜機船底曳網漁協組合長を兼任している。63歳。


■県森林・林業・緑化協会長全国植樹祭県実行委副会長 斎藤卓夫氏に聞く 全国植樹祭成功へ力

 第69回全国植樹祭県実行委員会副会長の斎藤卓夫県森林・林業・緑化協会長に、県内林業の現状や6月に南相馬市原町区で開かれる全国植樹祭の見どころを聞いた。


 -県内林業の現状は。

 「原発事故後に落ち込んだ木材生産量はここ数年回復基調にあり、明るい兆しが出始めている。ただ、林業の担い手確保は依然として深刻だ。森林資源は充実してきているが、伐採や整備に従事する人手が足りない。林業従事者と事業者両方へのさらなる支援が必要だ」

 -県産木材の需要拡大に大切なことは。

 「2020年東京五輪・パラリンピックで建設される選手村の交流スペースの一部に県産木材が利用されることが決まった。これを機に、県産木材の安全性を国内外に発信していく必要がある。幼少期から県産木材に身近に触れてもらう機会をつくるのも大切だ」

 -県内で森林の除染や間伐などを行う里山再生モデル事業が行われている。

 「モデル事業で得た知見を、モデル地域以外の放射性物質対策にどう生かしていくのか注目される。県民が山に入り、安心してキノコや山菜を採れるような状況が1日も早く訪れてほしい」

 -全国植樹祭の県内開催は1970(昭和45)年以来、48年ぶりとなる。

 「植樹祭は山に木を植えるのが一般的だが、福島大会では海岸防災林に木を植えることになる。会場の南相馬市原町区雫(しどけ)地区は震災の津波で多くの犠牲者が出た場所だ。鎮魂の意味も込めて、大会を必ず成功させたい」

 さいとう・たくお 福島市出身。福島農蚕(現福島明成)高卒。1982(昭和57)年の県議補選で初当選。2007(平成19)年まで通算6期務めた。2014年から県森林・林業・緑化協会長。77歳。

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