電子部品を中心とした製造・開発を手掛けてきたものづくりの技を生かし、二〇一一(平成二十三)年に医療機器の分野に参入した。
電波腕時計用の内蔵アンテナを世界に先駆けて製品化したが、知的財産(知財)の管理に手が回らず製造ノウハウが流出するという苦い経験を持つ。知財戦略を進め、新たな収益の可能性を探る中、医療分野に着目した。二〇一三年に第一種医療機器製造販売業許可を取得。二〇一七年には工場を備えた新社屋が完成し、研究・開発から製造・販売までの一貫体制を整えた。
骨を接合する手術の縫合器具として使用される「ベロシンクケーブル」は既存の医療用ケーブルと比べて伸縮性に優れている。中空構造を採用し、骨に巻き付けた際にケーブルが楕円(だえん)状に変形する工夫を加えた。接触面積が増えることで安定性を高めたほか、食い込みが少なくなり、治療に伴う痛みも軽減されるという。
医療機器の開発は、積み重ねてきた苦労の結晶といえる。赤津和三社長(74)は「これまで生み出し、蓄えてきた技と知見を応用し、医療分野でも貢献する」と意気込む。
二〇二二年(令和四)年には海外への販売展開を予定している。「いわきで生まれた技術を世界に発信し、地域に活力をもたらしたい」と自信を見せる。
■メモ
▽創業=1996(平成8)年4月
▽社長=赤津和三
▽従業員数=19人
▽住所=いわき市錦町江栗前25
▽電話番号=0246(77)0110