食と農を通して「福」を届けたいと、二〇一三(平成二十五)年、農産物加工所をつくった。自家栽培した農作物と県内産の食材を使用し、加工品を製造・販売している。
東京電力福島第一原発事故の発生により、県内の農業は大きな打撃を受けた。風評によって県産農産物の価格は下落した。「農産物を付加価値のある商品にして売れば、地域が元気になるのではないか」。そんな思いが加工所設立の出発点になっている。
モットーは「添加物を使わず、材料はシンプルに」。稲福由梨代表(35)の夫和之さん(49)は、農薬や化学肥料を使わずにコメや野菜、果樹を栽培する。収穫した作物は黒米甘酒、もち米甘酒、エゴマ豚みそ、ブルーベリージャムなどの原料になる。県の「ふくしま満天堂」のプレミアム商品にエゴマ豚みそが選ばれるなど、商品は高い評価を得ている。
地域の学校や農家との連携も重視する。材料を預かって加工を受託したり、商品開発をアドバイスしたりしている。都路小の児童が考案したキュウリのジャム「都路キュウリマン」の商品化にも関わった。稲福代表は「小さな農家を応援する加工所であり続けたい」と固く誓っている。
■メモ
▽設立=2013(平成25)年1月
▽代表=稲福由梨
▽従業員数=1人
▽住所=田村市滝根町神俣字入新田156
▽電話番号=0247(78)3847