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【野球殿堂】栄冠に向け運動継続を(1月15日)

2022.01.15 09:06

 野球界に功績のあった個人に贈られる二〇二二(令和四)年野球殿堂表彰の受賞者が決まった。特別表彰候補に挙がっていた福島市出身の作曲家、古関裕而さんの殿堂入りは、惜しくも一票足らずに成らなかった。古関さんの野球に対する貢献度と知名度は、今回選ばれた松前重義氏に決して引けを取らない。運動を継続していくべきだ。

 古関さんは三年連続で特別表彰の候補になっていた。選考委員会は十四人で構成され、一昨年は二票、昨年は五票を獲得し、「今年こそは」と機運が盛り上がっていた。今回は有効投票数の75%以上となる九票が殿堂入りの条件だったが、候補者の中で二番目に当たる八票を獲得した。

 古関さんの地元福島市では、二〇一八(平成三十)年に市と福島商工会議所、福島商高同窓会、福島民報社が発起人となって「古関裕而氏の野球殿堂入りを実現する会」を設立した。幅広い層の賛同者を増やしながら、市民挙げての運動を展開してきた。

 市民運動の広がりに加えて、今回は古関さんを全国にアピールする追い風が吹いていた。二年ぶりに開催された全国高校野球選手権大会の開会式で、俳優の山崎育三郎さんが大会歌の「栄冠は君に輝く」を独唱した。NHK連続テレビ小説「エール」に出演した山崎さんの圧倒的な歌声が甲子園球場に響いた。福島市の県営あづま球場で開幕戦が行われた東京五輪野球競技は、日本代表が金メダルを獲得した。閉会式では、前回東京五輪の行進曲となった「オリンピック・マーチ」に乗って選手らが入場した。

 古関さんの認知度は明らかに上がったが、一歩及ばなかった。殿堂入りに向けた活動を続けるに当たり、必要な得票に届かなかった原因を分析するとともに、さらにどんな活動が必要なのかを早急に検討してほしい。選考委員の心に響く推薦書などについても研究すべきだろう。

 過去に殿堂入りした候補者の中には、何年もかけて選出された人もいる。発表のあった十四日、福島市の古関裕而記念館で朗報を待った実現する会会長の木幡浩市長は「非常に残念。来年こそ殿堂入りするよう、諦めずに活動を続けていく」と決意を語った。

 念願の殿堂入りは逃したが、古関さんが福島の誇りであることには何の変わりもない。関係者は、古関さんの頭上に栄冠を輝かせたいとの思いをより強くしている。アピール材料が乏しくなってきている中でも、知恵を絞った地道な活動と全国への発信が重要になる。(安斎康史)