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【サイクルツーリズム】資源生かして推進を(4月25日)

2022.04.25 09:05

 健康増進のためにスポーツとしてサイクリングを楽しむ人が増えている。ロードバイクと呼ばれる自転車で県内の山道や海岸沿いを走る姿をよく見かける。首都圏から二時間程度で移動し、豊かな自然を感じながら走行できることから、週末には多くの愛好者が訪れる。広い県土と地域ごとの特色を生かしたサイクルツーリズムを推進し、地域活性化につなげたい。

 県は二〇二〇(令和二)年度に県自転車活用推進計画を策定し、サイクルツーリズムを活用した観光と地域振興を促進している。これまで、初心者を対象にしたサイクルツアーなどを企画して愛好者の拡大を図ってきた。セミナーでは、先進地として知られる愛媛県の「しまなみ海道」の取り組みなどを学び、地域振興の可能性を探った。

 今年度は県内七つの地域圏ごとに新たなツアールートを設ける。地元の愛好者や観光関係者らの意見を聞きながら、各地域の景勝地や観光地、食事スポットなどを組み込んでいく。日帰りや一泊二日などのルートづくりも検討する方針だ。

 自転車で一日に百キロ近く走行する人も珍しくなく、広域的な経済波及効果が期待できる。県内の温泉地などに宿泊しながら中通り、浜通り、会津地方の違った自然や食、文化を堪能できる三泊四日、一週間といった長期滞在型のルートも設定してはどうか。東日本大震災の被災地を巡るホープツーリズムと組み合わせれば、本県ならではの取り組みとして誘客の弾みにもなる。

 県内には魅力的なルートが整っている。いわき市の「いわき七浜海道」は五十三キロにわたる海岸線沿いがコースで、復興状況にも触れられる。棚倉、矢祭、塙、鮫川の四町村を走る「奥久慈街道」は、久慈川沿いをはじめ豊かな田園風景の中を八十キロ周遊する。北塩原村の「桧原湖周遊ロード」は湖畔の三十一キロを一周する。

 二〇一八(平成三十)年から開催されている「ツール・ド・ふくしま」は、今年は磐梯吾妻スカイラインヒルクライムなど七戦が予定されている。八百人が出場するレースもあり、県外の参加者は七割に上る。交流人口の拡大につながる好例と言える。

 愛媛県では、サイクリングガイドのボランティアが初心者と一緒にコースを走る取り組みを進めている。県内にも愛好者は多く、地元の魅力や復興状況を発信できるガイドの育成にも力を注いでほしい。地域を挙げて愛好者を迎える環境づくりも求められるだろう。(安島剛彦)