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【ふくしま2022参院選 現地ルポ②】<県中・県南>「農業票」しのぎ削る

2022.06.28 10:17

 参院選本県選挙区(改選一議席)に立候補した自民党公認の新人星北斗(58)=公明党推薦=、野党統一候補で無所属の新人小野寺彰子(43)=立憲民主党、国民民主党、社民党推薦=は県中・県南地方での勝負の鍵を握るのは与野党の支持が複雑に絡み合う「農業票」とみて、囲い込みにしのぎを削っている。

■ 星陣営 JA新体制機に攻勢

 27日、白河市や棚倉町などで自民党三役や閣僚が相次いで応援に駆け付け、星を国政に送るよう支持を訴えた。3区選対本部事務局長の県議宮川政夫は「世界情勢不安で食糧危機が現実味を帯びる中、農業者の所得向上など農業政策をしっかりと訴えていく」と言葉に力を込めた。

 陣営が重視するのは「農業票」の取り込みだ。JA夢みなみの5月末の役員改選で新体制に移行したのを好機と捉え、攻勢をかけている。これまでの衆院選福島県3区で県農業者政治連盟は、自民の衆院議員上杉謙太郎(47)の推薦を見送り、野党現職を推してきた経緯があるためだ。上杉の地盤である白河地方の農業票を固め、須賀川地方や田村地方にも食い込みたい考えだ。

 2016(平成28)年の参院選で失った自民議席の奪還が星陣営の悲願だ。3年前に勝利した自民現職が衆院3区の市町村で得た約8万2000票を基に、8万票以上を目標に据えた。投票率は55~60%と想定している。

 星の出身母体である県医師会をはじめ、農業や商工業、建設業など自民の支援・友好団体の地方組織が足元を固める。白河市在住の上杉や県中・県南地方の県議6人の後援会などもフル稼働し、集票を進めている。

 星の運営する総合病院は田村地方の複数の公立病院や保育所の指定管理者となっており、若年層から高齢層まで幅広い世代に知られている。ある市町村関係者は「地域医療を支えてもらっている事実は重い。(星に)義理を立てないといけない」と言う。医療界での実績を掲げつつ、農業者へも支持拡大を目指す。

■小野寺陣営 玄葉支持層核に浸透

 田村市にある小野寺陣営の事務所では27日、スタッフが翌28日に市内で開く個人演説会の準備に当たっていた。3区選対本部長の県議円谷健市は「物価高騰で地域産業が疲弊している中で、特に農業者支援は重要だ。戸別所得補償制度の再構築を強く訴える」と気を吐く。

 小野寺陣営は2016年の参院選で野党統一候補として3選した現職増子輝彦(74)の勝ち戦の再現を狙っている。増子が3区で獲得した約8万4000票を基に、得票目標を8万票以上に設定している。投票率は55%前後と見込む。

 選対組織の基盤となっているのは、当選10回を誇る衆院議員玄葉光一郎(58)が衆院選福島県3区の全19市町村に張り巡らせた後援会組織だ。地元選出の野党系県議4人の後援会や連合福島に加盟する労組などと連携し、基礎票を固めている。

 陣営は県中・県南地方での「農業票」の切り崩しに神経をとがらせている。県農業者政治連盟が、今回の参院選で星を推薦したためだ。これまでの衆院選福島県3区では県内小選挙区で唯一、自民候補ではなく、玄葉を推薦してきただけに、今回は自民に一定の農業票が流れるのではないかとの懸念がある。

 とはいえ、県中・県南地方では、星の街頭演説や個人演説会などに多くの農業関係者を動員するなどの組織的な動きは見えにくいとの声が聞かれる。農業関係者の一人は「玄葉さんとの付き合いが長い人は多い。緊張感を持った政治には野党が力を持つ必要がある」として、一定の農業票が小野寺に回るとみる。小野寺陣営は盤石な玄葉支持層を強みに浸透を図る。

   ◇  ◇

 NHK党公認の新人皆川真紀子(52)、政治団体「参政党」公認の新人窪山紗和子(47)、無所属の新人佐藤早苗(62)も独自の戦いを展開している。(敬称略)