参院選福島県選挙区(改選1議席)に立候補した自民党公認の星北斗(58)=公明党推薦=、野党統一候補で無所属の小野寺彰子(43)=立憲民主党、国民民主党、社民党推薦=による一騎打ちが会津地方で激しさを増している。両陣営とも会津で拮抗(きっこう)していると分析。小野寺が喜多方市出身を前面に出せば、星は南会津地方にゆかりがあるとアピール。一歩も引かない、つばぜり合いが続いている。
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■星陣営 南会津にゆかりあり
東北南部の梅雨明けが伝えられた29日、自民は会津地方最大の票田である会津若松市内で党本部の街宣車を走らせた。星陣営は公示以来、中山間地域の医療拡充、過疎・少子高齢化対策などの政策に加え、星の先祖は南会津地方にゆかりがあると伝えて回っている。「星を身近に感じてもらえる情報を会津の有権者に繰り返し伝えることが重要だ」と自民県連幹部は戦術の一端を語る。
ここ数年の国政選挙で、会津地方は自民にとって鬼門という。2016(平成28)年の参院選、2019(令和元)年参院選、昨秋の衆院選4区と相次いで会津で野党候補に敗れ、苦杯をなめた。公示日の22日に首相の岸田文雄が会津若松市で街頭演説に立ったのは、本県選挙区を重点に位置付ける党本部からの陣中見舞いだったとされる。
星は南会津にルーツがあるとはいえ、会津での知名度向上が公示前からの課題だ。「会津の三泣き」で知られる会津人の懐に飛び込もうと、会津独特の互助組織「無尽」の会合に十数回、顔を出し意見を交わしてきた。星を無尽に連れ回した陣営関係者は「最初は距離を感じたが、星が腹を割って地域医療の拡充などを話すと打ち解けた」と振り返る。
陣営は昨年の衆院選4区で菅家一郎(67)=比例東北=が得た7万3784票を基に、得票目標を7万7000票と設定。菅家は自身の選挙と同様に位置付け、県議や市町村議、医療や農業などの支援・友好団体と連携し組織票固めを急いでいる。
4区選対本部幹事長の県議小林昭一は「今度こそ絶対に負けられない。政権与党としての意地にかけて勝ち抜く」と鼻息が荒い。
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■小野寺陣営 出身地で負けられぬ
小野寺を支える県議会会派県民連合の県議3人は29日、6月定例県議会の合間を縫って県庁で集まり、新聞各紙の情勢調査を踏まえ後半戦の戦略を練った。立民県連幹部は「小野寺の魅力は真面目で誠実な人間性だ。会えば会うほど小野寺ファンは増えていく」と自信を見せる。7月4日に喜多方市、8日に会津若松市で小野寺の個人演説会を開き、組織を引き締める方針を確認した。
小野寺陣営にとって、出身地のある会津での勝利は必須条件だ。会津地方17市町村に西郷村を加えた衆院4区内に掲げた小野寺の選挙ポスターには「会津生まれの会津育ち」の文言を入れた。4区内で12万5000票が投じられると想定し、その6割に当たる7万5000票を小野寺が得票する目標だ。
昨秋の衆院選4区で菅家を抑え込んだ小熊慎司(54)をはじめ、前回参院選で野党統一候補だった元県議、県議、市町村議らが援護射撃する。生活者目線の政治を説きつつ、物価高騰に伴う家計負担の軽減などを訴え、政権批判票の取り込みに注力している。
政党票だけでなく、無党派層に食い込む戦略を描く。出身校である喜多方高の同窓会役員をはじめ、高校教員を務めた父、地元の友人らの縁故を頼って支持を広げている。ただ、「大票田の会津若松市や喜多方市だけでなく、周辺部の南会津郡や河沼郡、大沼郡などで浸透できるかが課題」(陣営幹部)。陣営は主婦層を中心とした同性からの支持を伸ばす余地があるとみて、戦略的に訴えていく。
4区選対本部幹事長の県議宮下雅志は「会津で負けは許されない。地元候補としての意地を見せたい」と意気込む。
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NHK党公認の新人皆川真紀子(52)、政治団体「参政党」公認の新人窪山紗和子(47)、無所属の新人佐藤早苗(62)も支持を訴えている。(敬称略)