18日に行われた第104回全国高校野球選手権大会第12日の準々決勝で、聖光学院は13安打を放つなど打線がつながり、九州学院(熊本)に10-5で快勝した。打線は一回に打者一巡で5点、四回に4連続安打などで4点を挙げた。先発佐山未来は被安打10と走者を背負う苦しい展開となったが5失点で完投した。
■三好4番の仕事 「攻める姿勢示せた」
2年生4番のバットが打線を勢いづけた。聖光学院の三好元気は一回1死二、三塁から左翼線に逆転の二塁打。「来た球を無心で振ろうと心がけた。攻める姿勢を示せた」と力を込めた。
相手の先発投手は「想定していなかった」という、熊本大会で1試合しか登板していない左腕。情報が不足している不安を打ち消すように「どんどん振っていこう」とチームで意思を統一した。一回の打席では2ボールからのファーストストライクを狙った。内角の直球にタイミング良く反応し、左翼線にはじき返した。
斎藤智也監督が「ボールを拾う技術はチーム一。4番を外す理由がない」と全幅の信頼を寄せる。普段から緩いボールを確実にミートするティー打撃を繰り返し、フォームを固めている。速球と変化球どちらにも柔軟に対応できる打ち方を手に入れた。四回には、代わった右腕から左中間を破る2点二塁打を放ち、大きく勝利を引き寄せた。
「打席に立つからには3年生を負けさせない」と意気込む。頼れるスラッガーがチームを高みに引き上げる。
■主戦佐山、雨中の粘投
最後の打者を4個目の三振に打ち取ると、マウンドで雄たけびを上げた。聖光学院の主戦佐山未来は132球を投げ抜き、「負けなくてよかった」と雨中の粘投を振り返った。九州学院の強力打線に10安打を浴びたが大崩れせず、チームを初の4強に導いた。
一回に先制を許したが、直後に5点の援護を得ると、得意球のカーブを駆使して徐々に持ち直した。五回こそ4安打を集められ3点を失ったが、六回は5球で打者3人を全て飛球に仕留めるなど流れを渡さなかった。試合中に雨脚が強まる展開にも、雨天が続いた春季東北大会の経験から「違和感なくやれた」と動揺しなかった。無失策でもり立ててくれたチームメートに試合後は「最高の仲間」と感謝した。
20日の準決勝は仙台育英と東北勢対決となる。「自分たちのやることは変わらない」と気負いはない。準々決勝までの4試合に登板し、2回戦以降の3試合は投球数100球を超えた。中1日で迎える大一番を前に体力的な疲労はあまりないという。「試合を重ねるたびに気迫は上がっている」と頼もしかった。
■安田4安打1打点 打棒好調、飛球好捕も
聖光学院の3番安田淳平は4安打1打点と、敦賀気比戦での右越え本塁打の勢いを維持し打線をけん引している。今大会初の2桁得点での勝利に「ひるむことなく攻め続ける姿勢を体現できた」と充実した表情を見せた。
四回には1死一、三塁から右前打で6点目を挙げると、六回はセーフティーバントで出塁し、盗塁を成功。八回も盗塁を決め、相手のわずかな隙も見逃さなかった。
七回には中堅の守備でビッグプレー。直前の打者の本塁打で相手が勢いづく中、左中間への飛球を水しぶきを上げ、スライディングキャッチした。「佐山に背後からエネルギーを送り続けようと思った」と振り返った。
守備練習では一歩目の動き出しや打球への反応にこだわっている。ベンチを含めた選手同士の「声のかけ合い」も思い切りの良いプレーにつながっているという。
「試合を重ねるごとに集中力が高まっている」とチーム状態に手応えを感じている。準決勝に向けて「攻める姿勢を貫き、一丸となって戦い抜く」と力強く語った。
■赤堀、4戦連続初回出塁 打線の口火に
聖光学院の主将で1番打者の赤堀颯は1回戦から4試合連続で一回に出塁。リードオフマンとしての役割を果たしている。「安打はスタンドの仲間の思いや応援があってこそ」と謙虚に語った。
1点を追いかける一回、外角低めのスライダーを中前にはじき返し、打者一巡となる猛攻の口火を切った。4点リードの四回無死一塁では丁寧に犠打を決め、一走佐山未来を着実に得点圏へ進めた。赤堀が広げた好機に後続も続いた。2番高中一樹からの4連打で一気に突き放した。
内野の要として、守備でもチームを引っ張った。この日は、試合中盤から雨が降り、グラウンドの状態は悪かったが遊撃として安定感のあるプレーで投手を援護した。「内外野ともに要所で良いプレーが出た」と、チームの無失策に胸を張った。
「仙台育英は選手層の厚い強いチームだが、自分たちができることをやりきるだけ。命懸けで戦いたい」。勝利の余韻に浸ることなく、次の新たな歴史を切り開くため闘志をみなぎらせた。
■高中つなぎ役全う 日々の犠打練習が結実
聖光学院の高中一樹は「粘り強く攻め続けられた」と胸を張った。一回無死一塁で三塁方向にセーフティーバントを決めて好機を広げると、四回には右前打を放ちチームを勢いづけた。日ごろから際どい場所を狙えるよう、30分ほど犠打の練習を行っている。東北対決となる準決勝に向け「目標は日本一。必死になって戦い抜く」と闘志を燃やした。
■攻守で存在感 伊藤
聖光学院の一塁伊藤遥喜は攻守で存在感を示した。七回2死一、三塁と相手に流れが傾きかけた場面。相手4番打者の強烈な一塁線の打球に飛びつき好捕。流れを呼び戻した。試合開始前、打率が1割を切り、不調に陥っていた打撃でも貢献。一回1死満塁で中犠飛を放ち貴重な追加点を挙げた。四回には右翼線に二塁打を放ち、復調の兆しを見せた。
■素直にうれしい 斎藤監督
聖光学院の斎藤智也監督は「乗り越えたかった壁。素直にうれしい」と目を細めた。これまで春夏通じて5回、4強の壁にはね返されてきた。過去のチームに比べ、不安なく試合に臨めたという。執念の強さがこれまでで1番だと感じている。「選手の勢いに乗らせてもらっている」と、主将の赤堀颯を中心に懸命に戦うナインをたたえた。
■生徒や教職員画面越し歓喜 聖光学院高
伊達市の聖光学院高で18日、生徒や教職員がテレビで観戦し、勝利を願った。ラグビー部とハンドボール部の生徒ら約30人が視聴覚室のテレビで試合を見守った。準決勝進出が決まると生徒らは、スティックバルーンを大きく打ち鳴らして喜び合った。
佐山未来投手の友人でラグビー部員の若林快さん(3年)は「九回までよく投げきった。打って守って優勝を勝ち取れ」と力を込めた。根本寿実教頭は「ついにベスト8の壁を破った。目標はぶれず、気持ちを切り替えて次の試合に臨んでほしい」と話した。
■優勝つかんで 木村県高野連理事長
県高野連関係者は県勢として51年ぶりに4強入りした聖光学院ナインに賛辞を贈った。
大会本部委員を務める宗像治県高野連顧問は「大舞台でも臆すること無く力を発揮している。特に打撃では簡単に三振しない粘り強さが際立っている」とたたえた。
木村保県高野連理事長は「走攻守の全てでチーム全員が一丸となっている。守備陣が好プレーで先発佐山をもり立てていた。このまま、優勝をつかんでほしい」と期待した。