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【被災地フットパス】誘客増やし活力に(12月23日)

2022.12.23 09:50

 県観光物産交流協会は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴い避難区域が設定された12市町村で、復興状況や地域の魅力に歩きながら触れるフットパス事業を実施する。住民が見どころを掘り起こしてコースを選定する。既存の被災地学習や観光企画などとの違いを打ち出し、誘客増によって地域の活力を高めてほしい。

 フットパス事業は地元ならではの優れた景観や季節感、食、文化、歴史などに触れ、その地域と住民に親しんでもらう狙いがある。津波の被害跡地に住宅を再建した新たな街並み、住民帰還の現状など被災地の復興状況に歩きながら理解を深める。震災と原発事故の伝承施設や、除染廃棄物の中間貯蔵施設など廃炉関連施設を巡るホープツーリズムと並んで取り組む意味は大きいと言える。

 「あぶくまロマンチック街道」として広域連携の基盤がある田村市都路町と川内、葛尾両村の国道399号沿線に今年度、住民の意見を踏まえ、観光資源と組み合わせた暫定コースが設けられた。県内外に参加を呼びかけ、実際に歩くイベントも催す。来年度以降は順次、残る9市町村にもコースをつくり、連携しながら観光客を呼び込む。

 コース選定に向けては被災地の住民の声をできるだけ広く吸い上げるよう求めたい。避難を強いられながらも、地元の景観に愛着を持ち、再び暮らすことを思い描いて復興への道を歩んできた人は多い。主体的にコースづくりに参加すれば地元の魅力を見つめ直すきっかけになり、古里への誇りを醸成することにもつながるはずだ。自らの思いが反映されれば、観光客らを迎える気持ちも深まり、交流にもつながりやすいだろう。

 並行して、観光客の受け入れ体制も整備すべきだ。観光客の希望にかなわなければ需要は生み出せない。各市町村に複数設けられたコースの特色をまとめた地図に沿線の食、文化、歴史などを盛り込む視点も不可欠だ。観光客の被災地への理解を手助けするガイドも養成する必要がある。

 避難指示が解除されても即座に住民帰還につながるわけではなく、かつての姿を取り戻す道は平たんではない。被災地の魅力や人と関わるフットパスは交流人口拡大に加え、復興を後押しする移住定住にも結び付く。産業を担い、地域活性化をけん引する12市町村への移住者は2021(令和3)年度、326世帯の436人で、前年度より171世帯、223人多かった。これまで以上に増やす施策も欠かせない。(円谷真路)