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【福島銀行とSBI】地方創生に一層力を(9月18日)

2025.09.18 09:11

 SBI新生銀行の公的資金完済を受け、SBIグループと連携する福島銀行の鈴木岳伯[たけのり]社長は福島民報社のインタビューで「法人、個人向けとも顧客に提供できる金融サービスの幅が広がる契機になる」との見通しを示した。大手金融グループの経営資源を操業の支援はもとよりベンチャー育成など多方面に生かし、疲弊する地域経済の活性化に結び付けてほしい。

 SBI新生銀は7月、前身である日本長期信用銀行(長銀)時代に国から投入された公的資金の残金2300億円を完済した。他行を含め最後の返済となった。多額の不良債権処理に列島が揺れた「平成の金融危機」の完結は実に感慨深い。これを機にSBI新生銀は経営の自由度が高まり、自らの裁量で注力する分野を選別できる利点が生まれるとみられる。

 親会社のSBIホールディングス(HD)は「第4のメガバンク」構想を掲げ、福島銀を含む全国10の地銀と資本・業務提携を結んでいる。「地方創生なくして地域経済、日本全体の経済成長は不可能」との立場で、今回の子会社の動きは提携先とつながりを深めるきっかけとなる。

 SBI新生銀は、提携先の清水銀行(静岡)と2023(令和5)年、医療法人の関連会社に協調融資した実績を持つ。SBIのグループ企業は清水、東和(群馬)、筑波(茨城)、大光(新潟)とそれぞれ、ベンチャーなどの支援に向けて共同ファンドを設けている。

 協調融資は融資額の上限が広がり、貸し手のリスク軽減にもつながる。ファンドはベンチャーへの投資によって、次代の地域経済のけん引役を育てる役割に期待できる。こうした新たな投融資も視野に福島銀はSBI側と連携を深めてもらいたい。事業所の廃業が相次ぐ中、創業支援は福島県経済最大の課題でもある。資本・業務提携を結んだ10行がまとまり、取引先の販路拡大や協業に向けたネットワークを構築できれば意義深い。

 6月に就任した鈴木社長は収益力の向上を目標に掲げている。「金利のある世界」の復活により、金融機関は厳しい競争の時代を迎えた。強力な後ろ盾から、いかに業界を生き抜く知恵を得ていくのか。新リーダーの手腕が問われている。(菅野龍太)