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【議員なり手不足】民意の反映どうする(9月15日)

2025.09.15 10:04

 地方で市町村議のなり手不足が深刻になりつつあり、県内では過去5年間で全59市町村の2割に当たる14町村議会選挙が無投票となった。議員が定数を割ってしまえば住民の多様な声が行政に反映されにくくなる。議会に諮られる政策に意見を交わす機会が減る。「民主主義の危機」とも言える現状に、より真摯[しんし]に向き合い対策を考えたい。

 福島民報社がこのほど実施したアンケートで、地方議員のなり手不足を「大いに感じる」「ある程度感じる」と回答した議会は51市町村に上り、全体の8割超を占めた。町村に限れば46のうち44に上り、郡部ほど深刻だった。

 人口減少や過疎化こそ、なり手不足の大きな要因だろう。総務省によると地方議員の報酬の全国平均月額は市が41万円だが、町村は21万9千円と半分近くで、厚生労働省の調査による大卒の初任給平均約25万円より少ない。県内では報酬の引き上げによって人材の確保を目指す動きも出ているが、賛否は分かれる。検討中の国見町では「議員から財政が厳しい中で住民に受け入れられないのではないかとの懸念も出ている」という。川俣町を含め首長が有識者らに諮問して判断した事例が全国では少なくないが、議会自らが議員の適正な報酬額を住民らと協議する場を設けてはどうか。日頃の活動を紹介する場ともなる。

 人口約1万人の北海道栗山町議会(定数11)は無投票が2回続き、「議員の学校」を企画した。町内外から募った19人に、2カ月間で模擬議会も含めて実際の議員活動を体験してもらった。その直後の町議選にこのうちの3人が立候補し、全員が当選した。こうした取り組みは、なり手確保と議会活性化には有効な手法になり得るのではないだろうか。

 地方議会への女性の関心を高めるのも大事だ。全国町村議会議長会によると、昨年7月1日現在の県内の女性町村議は57人で、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生前の2010(平成22)年の30人からほぼ倍増した。政府は人口減少などを踏まえ、女性活躍推進を重要政策に掲げる。ハラスメント対策を徹底し、育児中の議員のために保育施設を用意するなど、活動しやすい環境づくりも進めてほしい。(渡部総一郎)