大相撲の関脇若元春(29)=本名・大波港、福島市出身=は名古屋場所(9日初日、愛知・ドルフィンズアリーナ)で大関とりに挑む。5日は名古屋市内の荒汐部屋に新大関を迎え、朝稽古に汗を流した。自己最多の12勝を挙げれば昇進の目安「直近3場所33勝」に届く。「昇進や優勝を意識しすぎず、平常心で臨む」と静かに闘志を燃やす。
荒汐部屋が宿舎を置く善行寺。所属力士が稽古に励む中、若元春はてっぽうなどの基本運動で徐々に体を温めた。急きょ、出稽古に訪れた新大関霧島(27)=陸奥=との三番稽古に臨んだ。
三番稽古は同じ相手と続けて取る。力の拮抗(きっこう)した両者の気迫あふれる攻防は約30分間に及んだ。出世争いで先を行く好敵手に12番取って3勝と分は悪かったが、がっぷり四つになり、決着まで約5分を要する場面も。若元春が押し込み、力一杯押し出した中盤の一番では、ファンから歓声が上がった。
若元春は「稽古なので勝敗はあまり関係ない」と語る一方、負ければ声を荒らげて悔しがる勝負師の横顔ものぞかせた。
名古屋場所は大栄翔(29)=追手風=、豊昇龍(24)=立浪=を含む、3関脇に大関昇進が懸かる。若元春は春場所に小結で11勝、夏場所に新関脇で10勝。昇進の目安とされる「直近3場所で33勝」に乗せるためには12勝が要る。かつてない好成績が求められる状況だが、気負い過ぎると空回りする感覚があるという。「平常心で挑むのが一番大事だ。気負わず、泰然自若で戦う」と自然体を貫く。
荒汐部屋は長野県での合宿を経て、6月22日に名古屋入り。若元春は出稽古も交え、稽古に励んでいる。6日は錣山部屋に出向き、仕上げの調整を続けるという。8月には楢葉町と福島市で巡業、福島市での合宿が控える。「関脇らしい相撲で良い成績を残し、古里での巡業と合宿を楽しみたい」と笑みを浮かべた。
■若隆元、丹治兄弟も精進
「大波3兄弟」の長男の東幕下19枚目、若隆元(31)=本名・大波渡=や福島市出身の西幕下50枚目の丹治(17)=本名・丹治純=、西三段目7枚目の大賀(20)=本名・丹治大賀=の「丹治兄弟」も精進を重ねた。
先場所5勝2敗で勝ち越した若隆元は申し合いに臨んだ。師匠の荒汐親方(元幕内蒼国来)から腕の使い方などを指導された。稽古中は率先して声を出した。仕上がりは順調という。「一番一番に集中し、一つでも多く星を重ねて勝ち越す」と宣言した。
丹治兄弟は大波3兄弟の背中を追い、荒汐部屋に入門。大賀は幕下で臨んだ先場所を3勝4敗で負け越して三段目に落ちた。丹治は2場所続けて5勝2敗で勝ち越し、幕下に昇進した。ともに直近の目標は新入幕だ。大賀は「体のしなやかさを生かして迫力ある相撲をとる」、丹治は「番付をさらに上げ、地元に良い知らせを届ける」と高みを目指している。
西前頭12枚目の若隆景(28)=本名・大波渥=は復帰に向けてリハビリを続けているという。